僕なりのジャズ超名盤研究・18
ジャズを本格的に聴き始めた頃、この盤の存在が不思議だった。ジャズの評論からすると、概ね、ディブ・ブルーベックというピアニストは「イモ」なピアニストという評価だった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」や「イモ」という評価。ジャズ者初心者として、これは下品やなあ、と思いつつ、ブルーベックの諸作については、なかなか手が伸びなかった。
しかし、である。ジャズ初心者向けのジャズ盤紹介には、必ずと言って良いほど、この盤のタイトルが上がる。ハワイ出身の S・ニール・フジタがデザインを手掛けた、前衛的な模様の絵をあしらったジャケットが印象的で、ジャズ初心者向けのジャズ盤ならば、とジャズを聴き初めて2年目位にゲットしている。
Dave Brubeck Quartet『Time Out』(写真左)。1959年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as) Dave Brubeck (p) Gene Wright (b) Joe Morello (ds)。変則拍子ジャズの定盤中の定盤。ジャズで定番のビート、4ビートと2ビート以外を「Time Out(変拍子)」と呼んでいる訳だが、この盤は、その「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」である。
1曲目の「Blue Rondo A La Turk(トルコ風ブルーロンド)」は「9分の8拍子」。スイングしないピアノとして、一部で忌み嫌われるブルーベックのピアノが印象的な旋律を奏でる。2+2+2+3拍子という刻み。これでは横揺れのスイングは出来ない。ちなみに、ブルーベック・カルテットでは、ブルーベック十八番の「スクエアなスイング」で、この「9分の8拍子の曲」をノリの良い演奏に仕上げている。
3曲目のタイトル曲が、かの有名な「Take Five」。「5分の4拍子」の変拍子ジャズで、3+2拍子という刻み。これも横揺れスイングは無理。この「5分の4拍子」の曲も、ブルーベック・カルテットは「スクエアなスイング」で乗り切っている。ジョー・モレロのドラミングの巧みさ。それを支えるブルーベックのピアノのコンピング。
「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」とは良く言ったもので、前述の1曲目が「9分の8拍子」、3曲目が「5分の4拍子」で完璧な変拍子。他の曲は「3分の4拍子」や「12分の8拍子」といった「3拍子」が主体の曲。5曲目の「Kathy's Waltz」は、6分の8拍子をインテンポで4分の4拍子に強引に被せている様で、これもある意味「変拍子」。
但し、「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」だと難解になりがちなんだが、ブルーベック・カルテットはそうならない。ブルーベック・カルテットの演奏はどのアルバムも、どの演奏も「判り易い」。この「判り易さ」がブルーベック・カルテットの特徴であり、最大の長所。この『Time Out』がジャズ初心者向けのジャズ盤紹介に上がるのも、この「判り易さ」があるからだろう。
まず優れたアレンジがベースにあって、カルテットのメンバーの演奏能力とテクニックが高いこと。そこに、ブルーベックの理知的でスクエアなノリのピアノが演奏全体を統率し、ウォームで丸く力強いデスモントのアルト・サックスがフロントを担い、破綻の無い抑制の効いた、クールなインプロを展開する。これが「判り易さ」に繋がっている。ジャズにとって「判り易さ」は大切な要素。
しかし、「判り易い」からと言って、この変則拍子の「Take Five」が、1987年、アリナミンVのCMのバックで流れた時には驚きました。「ジャズはお洒落」なんていう、バブル期の産物なんでしょうが、よくこんな変則拍子のジャズ曲をCMに採用したもんです。今でも感心します。
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