ブルーベックとデスモンドの融合
ジャズの楽器の中ではピアノが一番好きである。もともと、子供の頃、中学生まで、クラシック・ピアノを習っていたこともあって、ジャズ・ピアノは「聴く」ばかりでなく、及ばずながら「弾く」側の気持ちやテクニックを慮って、鑑賞することが出来る。
ジャズ・ピアニストはあまたあれど、お気に入りのピアニストは数十名。その中に「デイブ・ブルーベック」がいる。ブルーベックと言えば、僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、評論家筋を中心に「スイングしないピアニスト」だの「ファンクネスが無い」だの「白人だからジャズじゃない」だのケチョンケチョンに書くものだから、本当に我が国では人気がイマイチだった。
しかし、21世紀、ネットの時代になって、我が国のジャズ者の方々の中にも、ブルーベックのピアノがお気に入り、という意見もちらほら見る様になった。米国ではデビュー当時から、人気のピアニストである。魅力が無ければ人気は出ない。やっと我が国でも、ブルーベックのピアノの本質を、個性を直接感じて評価するジャズ者の方々が出てきたということ。頼もしい限りである。
Dave Brubeck Quartet『Jazz at the College of the Pacific』(写真左)。1953年12月14日、カリフォルニア州ストックトン「College of the Pacific」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Ron Crotty (b), Joe Dodge (ds)。ブルーベック・カルテットの「大学巡回ライヴ」の音源のひとつ。
ブルーベックの「大学巡回ライヴ」には、『Jazz at Oberlin』をはじめとして名盤揃い。この「College of the Pacific」でのライヴも、ちょっと音質に難があるが、同様に内容は充実している。ブルーベックの硬質のスクエアにスイングするピアノ、暖かくてクールなアルト・サックスの個性は、この1953年のライヴで完成しているのが判る。
ブルーベックのピアノを聴いていると、もともとブルーベックのピアノはスイングしようとはしていない。そもそもオフビートでは無い、ブルージーなキーを多く使わない、クラシックのテクニックをアレンジに反映する。
なるほど、これでは、スイング・ジャズ時代から培われた「横揺れスイング」をしようにも出来ない。しかし、ビートにはしっかり乗っている。リズムはスクエアに乗っている。「スクエアなグルーヴ感」。「スクエアにスイングする」のがブルーベックのピアノであり、ブルーベックの専売特許なのだ。
そんな硬質でスクエアのスイングするピアノに、全く正反対の個性で相対するのが、デスモンドのアルト・サックス。デスモンドのアルト・サックスは「丸い」。暖かく「丸い」。そして、よくよく聴くと、ブルーベックの「スクエアにスイングする」ピアノに乗って、デスモンドのアルト・サックスは「丸くスクエアにスイング」している。
このブルーベックのピアノとデスモンドのアルト・サックスの「正反対の個性の融合」こそが、このカルテットの「肝」。その「正反対の個性の融合」が、このライブ盤にしっかりと記録されている。
聴衆もノリノリ。このブルーベック初期の時代に既に人気は高かったことが窺い知れる。「スクエアなスイング感」が不思議と心地良い。なにも「横揺れスイング」だけが全てでは無い。
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