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2022年12月 2日 (金曜日)

企画盤「危険な関係のブルース」

レジェンド級の「哀愁のピアニスト」、デューク・ジョーダン。ピアニストの腕前もさることながら、作曲家としての才能が素晴らしい。とにかく、書く曲書く曲、良い曲ばかり。特に、ブルース調の曲、マイナー超の曲が素晴らしい。「哀愁のピアニスト」の面目躍如である。

ジョーダン作曲の曲の中で一番有名なのが「NoProbrem(危険な関係のブルース)」。この曲は、元々は、1959年のフランス映画「危険な関係(Les Liaisons Dangereuses)」の為に書き下ろされたもの。

しかし、このサウンドトラックには、作曲者については「J. Marray」という名前が記載されており、本来の作曲者であるデューク・ジョーダンには著作権料が一切入って来なかった。全く以て酷い話である。

これを見かねたチャリー・パーカー未亡人のドリス・パーカーが、経済的支援を含め、デューク・ジョーダンの為に、1962年に録音した企画盤がある。

Duke Jordan『Les Liaisons Dangereuses』(写真左)。1962年1月12日、NYでの録音。パーソネルは、Duke Jordan (p), Eddie Khan (b), Art Taylor (ds), Sonny Cohn (tp #1,3-7), Charlie Rouse (ts #1,3-7)。ちなみに収録曲は以下の通り。

side 1 (A)
01. No Problem #1 (Duke Jordan) 8:50
02. No Problem #2 (Duke Jordan) 4:15
03. No Problem #3 (Duke Jordan) 6:21

side 2 (B)
04. Jazz Vendor (Duke Jordan) 4:52
05. Subway Inn (Duke Jordan) 4:04
06. The Feeling Of Love #1 (Duke Jordan) 7:14
07. The Feeling Of Love #2 (Duke Jordan) 3:18
 

Duke-jordanles-liaisons-dangereuses

 
この曰く付きの名曲「No Problem」が3バージョン連続して収録されている。ジャズ・メッセンジャーズのような熱いハードバップな演奏の「No Problem #1」。ちょっぴりラテン志向が見え隠れする、アップテンポのピアノ・トリオ演奏の「No Problem #2」。ユッタリとしたテンポで、印象的にメリハリを付けて演奏される「No Problem #3」。

名曲というのは、どんなアレンジにも十分耐える。この「No Probrem」の3連発は、アレンジを変えているだけだが、冗長なところは全く無く、飽きることが無い。

後半(LP盤だとB面に相当する)は、トランペットとテナー・サックスがフロント2管、クインテット演奏の佳曲が並ぶ。どの曲も良い感じの曲ばかり。ジャズの名作曲家、デューク・ジョーダンの面目躍如的な演奏。

但し、この盤で誤解されやすいのは、デューク・ジョーダンは、この「No Problem」1曲だけの「一発屋」の様に感じるところ。何も、デューク・ジョーダン作の佳曲は「No Problem」だけでは無い。彼の書く曲はどれもが「佳曲」。

そういう意味で、この企画盤、デューク・ジョーダンの代表作として、よくジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されているが、とんでもないことである。

この盤は、真の作曲家に著作権を認めない、という酷い仕打ちに怒ったドリス・パーカー(Doris Parker)が、デューク・ジョーダンの名誉回復のために録音した企画盤であり、デューク・ジョーダンの優れたリーダー作は他に沢山ある。

この企画盤は、デューク・ジョーダンのリーダー作をある程度、聴き込んで、彼のピアノの個性、優れた作曲能力を踏まえた上で、気分転換的に聴く盤だろう。これを代表作とするなんて、何て乱暴な事をするのか、未だに理解に苦しむ。
 
 

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