フリゼール・スタイルのエレギ
Bill Frisell(ビル・フリゼール)。米国ボルチモア〜デンヴァー出身のジャズ・ギタリスト。しかし、出てくるギターの音は伝統的なジャズ・ギターの音では無い。軽くサスティーンが聴いて、複雑にねじれ、自由度の高いモーダルなフレーズで、無調に展開することもしばしば。
1970年代以来、ECMレーベルに代表される「ニュー・ジャズ」を地で行くようなエレギで、伝統的なジャズ・ギターを愛でるジャズ者の方々からは、とにかく評判が悪い。でも、僕は初リーダー作『In Line』を聴いて以来、フリゼールはお気に入りのギタリストの1人である。
とにかく自由度の高いエレギで、伝統的な4ビートに収まることは「まず無い」。しかし、フリゼールのギターは、硬軟自在、緩急自在で、変幻自在なモーダルなフレーズを駆使して、即興性溢れるインプロを展開するところは、ジャズの最大の特徴である即興演奏という面ではその個性は突出している。
Bill Frisell『Four』(写真左)。2022年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Greg Tardy (ts, cl, b-cl), Gerald Clayton(p), Johnathan Blake (ds)。ブルーノート・レーベルでの3作目となるリーダー作になる。パーソネルを見るとベーシストがいない。ベースレスの変則カルテットでの演奏。
フリゼールというレジェンド・ギタリストはブレが無い。初リーダー作の『In Line』(ECM, 1983)以来、エレギの音は一貫して「軽くサスティーンが聴いて、複雑にねじれ、自由度の高いモーダルなフレーズ」を維持。伝統的な4ビートのハードバップな演奏をやることは一切無い。一貫して「ニュー・ジャズ」なエレギを弾きまくっていて立派だ。
この新作でも、フリゼールは変わらない。冒頭「Dear Old Friend (for Alan Woodard)」の一発目のエレギのフレーズを聴けば、直ぐに「フリゼールのギターや」と判るくらいに個性的な音。以降、エレギの展開はフリゼールの個性のショーケース的内容。とにかく自由度が高い変幻自在なエレギはフリゼールの独壇場。
そんなフリゼールを、ジェラルド・クレイトン(p)、ジョナサン・ブレイク(ds)という若手バリバリのリズム隊が、これまた、柔軟に臨機応変に、フリゼールのギターにガッチリ適応し、フリゼールのギターにクイックに反応し、フリゼールのギターをバッチリ際立たせている。そして、グレッグ・タルディ(sax, cl)が、フロントの片翼を担って、フリゼールのインプロにしっかりと寄り添っている。
若き良きサイドマンに恵まれ、今年で71歳になる大ベテラン、レジェンド・ギタリストのフリゼールは、そのテクニックを惜しみなく披露し、思う存分、ねじれたエレギを弾きまくっている。以前は「変態ギター」なんて形容された時代もあったが、この新作を聴いていて、もはやこれは「フリゼール・スタイル」のジャズ・エレギなんだなあ、と感じた。しかし、本当にフリゼールのエレギは「ブレが無い」。
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