バッキング上手のケイブルス
しばらく、お休みしていたのだが、ジョージ・ケイブルス(George Cables)のリーダー作の聴き直しを再開した。というのも、以前はサブスク・サイトには、ケイブルスのリーダー作が5〜6作はアップされているのだが、他のアルバムは対象外。CDにもなっておらず、廃盤状態の盤が多数で、ケイブルスのリーダー作の聴き直しを中断した。
しかし、最近、サブスク・サイトでケイブルスのリーダー作を検索したら、出てくる出てくる。ケイブルスのリーダー作の中で、スティープルチェイス・レーベルからのリリースが9作あって、この全てがアップされているのを確認した。他のアルバムと併せて、ケイブルスのリーダー作の3分の2程度をサブスクでカヴァー出来るので、聴き直し再開と相成った訳である。
George Cables『Cables' Vision』(写真左)。1979年12月17–19日の録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (ac-p, el-p), Freddie Hubbard (flh), Bobby Hutcherson (vib), Ernie Watts (ts, fl), Tony Dumas (ac-b, el-b), Peter Erskine (ds), Vince Charles (perc)。
フレディ・ハバードのフリューゲルホーンとアーニー・ワッツのテナー、そして、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブの3楽器がフロント、バックのリズム隊は、リーダーのケイブルスのピアノとベース+ドラムにパーカッションが入った4人。総勢7名のセプテット構成。
ケイブルスは電子ピアノも弾いていて、ちょっとフュージョン寄りの演奏もあるが、コンテンポラリーな純ジャズ志向といった雰囲気なので、目くじらを立てるほどのことは無い。逆に、電子ピアノを硬派に弾きまくっていて、ケイブルスって電子ピアノもイケるなあ、と感心したほど。
ケイブルスのアコースティック・ピアノは、適度に硬質のタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションが個性。適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い。
この盤では特に、ケイブルスのピアノの「伴奏上手」なところが聴ける。しなやかで硬質なピアノでフロントをサポートする訳だが、ケイブルスはバックに回った時には「多弁」を封印する。逆に、モーダルなフレーズを弾き回しなかで、間を活かしたピンプロに徹して、フロント楽器とバッキングのフレーズがぶつかることが無い。職人芸的なバッキングに、思わず身を乗り出して聴き耳を立てる。
このバッキングが、フロントにとって快適なのか。それは、あの高テクニック+多弁なハバードのトランペットが気持ちよさそうに抑制したフレーズを聴かせてくれていることから、そして、ワッツのテナーとハッチャーソンのヴァイブが何時になく、熱い躍動感に溢れていることから、ケイブルス率いるリズム隊のサポートが抜群なことが良く判る。
米国では人気が高く、リーダー作は40枚を超える。伴奏上手でもあるため、サイドマンとしての他のリーダー作への参加も多い。それでも、我が国ではケイブルスのピアノは全く人気が無い。が、リーダー作を聴き漁るうちに、ケイブルスの優秀な個性に気がついて、僕のお気に入りのピアニストの1人となっている。やはりジャズは自分の耳で聴いて、自分で良し悪しを判断するに限る。
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