ミッチェルの初ブルーノート盤
ブルー・ミッチェルのリーダー作は、ポップでキャッチャーな、明るく乗りの良いファンキー・ジャズ〜ジャズ・ファンクがメイン。特に、ブルーノート・レーベルに残したリーダー作に、その良いところが余すこと無く記録されている。ファンキーで円やかで流麗なトランペッターの個性をしっかり着目し、録音に残しているところは、さすが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンである。
Blue Mitchell『The Thing to Do』(写真左)。1964年7月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Chick Corea (p), Gene Taylor (b), Al Foster (ds)。録音日で見ると『Step Lightly』が初ブルーノート盤に見えるが、実はこの『Step Lightly』は当時、お蔵入り。発売されたのが1980年になってから。今回ご紹介する『The Thing to Do』は1965年の発売なので、当時の初ブルーノート盤になる。
リーダーのブルー・ミッチェルのトランペットと、ジュニア・クックのテナーの2管フロント。当時のホレス・シルヴァー・クインテットのフロント管の2人である。アルバム全体の雰囲気は、ソウル・ジャズの一歩手前、成熟したノリノリなファンキー・ジャズである。
バックのリズム・セクションの人選が面白い。ピアノに若き日のチック・コリア。モンゴ・サンタマリアのバンドで頭角を現し始めた頃のチックをいち早く、ブルーノートは採用している。さすがである。ブルー・ミッチェルの下で、ファンキーなピアノを弾くチックは堂々としたもの。ファンキーなフレーズを難なくこなしている。チックはファンキーなピアノも上手い。この盤で再認識である。
ベースが、これまた当時のホレス・シルヴァー・クインテットのベーシストであった、ジーン・テイラー。ミッチェル&クックのフロント2管との呼吸はピッタリ、ファンキーなベースラインをブンブンに弾き進めている。
そして、一番ユニークなのが、ドラムのアル・フォスター。エレ・マイルスのドラマーとして有名だったアルだが、ファンキーなドラムを叩かせたら上手いのだ。マイルスの下で、エレ・ファンクなビートを刻んでいたアルだが、ファンクネス濃厚なドラミングはお手のものだった、ということがこの盤を聴けば良く判る。しかし、アルフレッド・ライオンって、よくアル・フォスターをブルー・ミッチェルのリーダ作に持って来たもんだ。その豪腕、恐るべしである。
いきなり、カリプソ調の明るく楽しい曲「Fungii Mama」から始まる。これが、あっけらかんとしていて明るくて、リズミカルな演奏。体が自然に動き、足でリズムを取り始める。特に、チックを始めとするリズム・セクションの躍動感が心地良い。
続くファンキーで小粋でスローな「Mona's Mood」も良い雰囲気。イントロのミッチェル&クックのフロント2管のユニゾン&ハーモニーなんて「ファンキー・ジャズ」そのもの。スローでファンクネス濃厚に漂う雰囲気の中、流麗で明快なミッチェルのトランペットが伸びの良いフレーズを吹き上げていく。
3曲目の「The Thing to Do」は、ハードボイルドなジャズロック風、4曲目の「Step Lightly」は、スローで硬派なファンキー・ジャズ。そして、ラストの「Chick's Tune」は、ファンクネス濃厚だが、切れ味の良いモード・ジャズ。ファンキー・ジャズの担い手、ホレス・シルヴァー・クインテット出身の3人を含め、メンバー全員、魅力的な、ファンキーでモーダルなフレーズを連発している。覇気溢れる、爽快溢れるモード・ジャズである。
ハードバップ全盛期に、内容の濃い、成熟したファンキー・ジャズ盤。リーダーのブルー・ミッチェルも、実に楽しそうにトランペットを吹きまくっていて、聴いていて気持ちが良い。若き日のチック・コリアがピアニストとして、参加しているのも見逃せない。とにかく、聴いていてとても楽しいアルバムである。
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