粋なオールド・スタイル・テナー
スイング時代からビ・バップを経験すること無く、中間派を経由して、ハードバップ期に至るまでの期間、三大テナーマンとして君臨したのが、コールマン・ホーキンス、ベン・ウエブスター、レスター・ヤング。この3人は、ロリンズとコルトレーンが新しいスタイルのモダン・テナーを流行らせるまで、テナー・サックスの吹奏スタイルを代表する3人だった。
今では「オールド・スタイル」と形容される、テナー・サックスの吹奏スタイルで、濃厚なビブラート、音のしゃくり、様々な装飾音、サブトーンの多用などが特徴。吹奏のテンポはスロー〜ミッドテンポで、高速フレーズは基本的に吹かない。この「三大テナーマン」は、この「オールド・スタイル」な吹奏で一世を風靡したのだ。
『Coleman Hawkins Encounters Ben Webster』(写真左)。1957年10月16日、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins, Ben Webster (ts), Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Alvin Stoller (ds)。そんな三大テナーマンのうちの2人、コールマン・ホーキンス、ベン・ウエブスターが共演した素敵なアルバム。
この盤のホーキンスとウエブスターのテナーを聴けば、オールド・スタイルと呼ばれる吹奏スタイルが良く判る。モダンだのモードだの全く眼中に無し。そこにあるのは「ジャズ・テナーの基本」。粋なジャズ・テナーである。
音が基本的に大きい。表現力は半端なく、歌心は豊か。吹奏テクニックはレベルが高く、ビブラート、しゃくり、装飾、サブトーン、どのテクニックも難なくこなす。そんな「ジャズ・テナーの基本」がこの盤に詰まっている。
吹奏のテンポもスロー〜ミッドテンポで固められ、2人のテナーを楽しむ、2人のテナーをじっくり聴く、いわゆる「聴かせるジャズ」が展開される。アドリブ・フレーズもバリエーション豊か。たまに「引用」などもかましながら、粋なジャズ・テナーを展開していく。
ヴァーヴは大手レーベルなので、実験的、先進的なジャズを追求すること無く、一般大衆に向けた「聴き心地の良いジャズ」をプロデュースする傾向にある。それが、この盤にバッチリ反映されている。
1つ間違えば「イージーリスニング的な軽音楽」に陥りそうなオールド・スタイルの吹奏だが、ホーキンスとウエブスターの卓越したテクニックと豊かな歌心を兼ね備えたテナーが聴き応え満点で、最後までじっくりと聴き込んでしまう。まるで唄うが如くのテナーで、一流のジャズ・ボーカルを聴き込んでいる錯覚に陥る様な、そんな感じがとても心地良い。
リズム・セクションの要、ドラムにアルヴィン・ストーラーを起用しているのも合点がいく。ストーラーは、フランク・シナトラをはじめ、シンガー御用達ドラマー。フロント2管、まるで唄うが如くのホーキンスとウエブスターのテナーをしっかりとサポートし、しっかりと鼓舞している。
バックに控えるリズム・セクションもふるっていて、当時、ヴァーヴ専属だった、ピアノの達人のピーターソン、燻し銀ギターのエリス、ベース職人ブラウンの、当時の「オスカー・ピーターソン。トリオをまるまる起用している。さすが、当時の大手ジャズ・レーベルのヴァーヴ。リズム・セクションにも一流どころをしっかりと起用して、全く手を抜かない。
1957年、ハードバップ成熟期の中での、オールド・スタイルのテナー盤。内容としてどうだろう、当時の流行だったモードやファンキーに迎合していないか、不安だったが、それは全くの杞憂であった。モダンやモード、ファンキーなど全く眼中に無し。自分達のスタイルである「オールド・スタイル」そのままに、モダンなジャズを展開している。いやはや豪気である。
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