ジャズ喫茶で流したい・253
ズート・シムス(Zoot Sims)は、玄人好みのサックス奏者である。というのも、コマーシャルなところ、キャッチャーなところが無いので、内容の良いリーダー作についても、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌にその名が上がることが少ない。恐らく、日本のレコード会社のプロモーションの乗りそびれたのだと思われる。
確かに、ハードバップ期から第一線で活躍しているが、ハードバップ以降、ジャズの多様化の時代にも、ズートは自分のテナーのスタイルや演奏志向を変えたことが無い。ずっと、ハードバップ時代のズートで居続けている。これが、売る方からすると「コマーシャルなところ、キャッチャーなところが無い」ということになるのだろう。
Zoot Sims『The Modern Art of Jazz』(写真左)。1956年1月11&18日、NYでの録音。“幻”のレーベルといわれるDAWNレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Zoot Sims (ts), Bob Brookmeyer (valve-tb), John Williams (p), Milt Hinton (b), Gus Johnson (ds)。リーダーのズートのテナーと、ブルックマイヤーのバルブ・トロンボーンのフロント2管のクインテット編成。
1956年にNYでの録音だが、音の雰囲気は「米国ウエストコースト・ジャズ」。フロントのズートのテナーとブルックマイヤーのトロンボーンのフロント2管のスインギーな「チェイス、ユニゾン、ハーモニー」が実に心地良く響く。アルバム全曲、優れたアレンジで「聴かせる」ジャズを展開している。
当時の東海岸ジャズの熱気溢れる「ジャム・セッション」でも「熱いインタープレイ」でも無い。クールに流麗に、優れたアレンジに乗って、演奏テクニック、そして歌心を駆使して、聴いて楽しいハードバップ・ジャズを展開している。収録全8曲中、半分の4曲がスタンダード曲だが、このスタンダード曲のアレンジと解釈が、とりわけ「聴きもの」なのだ。
とりわけ冒頭の3曲のスタンダード曲、「September in the Rain」〜「Down at the Loft」〜「Ghost of a Chance」の演奏には「参った」。特に歌心溢れるズートとブルックマイヤーの演奏が群を抜く。3曲目のバラード曲「Ghost of a Chance」における情感溢れるズートのテナーと抱擁感溢れるブルックマイヤーのトロンボーンが絶品である。
ジョン・ウィリアムスのピアノ、ミルト・ヒントンのベース、ガス・ジョンソンのドラムのリズム隊も、ズートとブルックマイヤーの演奏にならって、ポジティヴで明るくてスインギーなサポートを展開していて、ズート&ブルックマイヤーのフロント隊との相性抜群である。ほんと良いサポートである。
ジャケも雰囲気があってグッド。LP時代は「幻の名盤」の誉れ高い逸品。CDでリイシューされ、今ではストリーミングでも聴くことが出来る様になった。ズートは玄人好みのテナーマンと言われるが、もっともっと、一般のジャズ者の方々に聴いて貰いたい。聴けば判るが、小粋で味わい深く判り易い、ハードバップなテナーマンである。
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