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2022年10月11日 (火曜日)

ブロンバーグのベース・ソロ盤

ベーシストがリーダーのアルバムには、テクニックを重視した、その特徴的な演奏テクニックを全面に押し出した内容のものも多くあるのだが、ベース・ソロだけのアルバムは殆ど無い。

その理由として、ベースの場合、速いフレーズのソロを取りにくいこと、そして、リズム&ビートを醸し出すのが、基本的に難しいこと、その2点が上げられるだろう。

Brian Bromberg『Hands』(写真)。2008年7月録音。ちなみにパーソネルは、Brian Bromberg (ac-b)のみ。副題の「Solo Acoustic Bass」とある。 2009年4月にリリースされた、ブライアン・ブロンバーグのアコベのソロ盤。全編、風呂バーグのベース・ソロのみの演奏が収録されている。

ブライアン・ブロンバーグ(Brian Bromberg)は、米国アリゾナ州ツーソン出身。1960年生まれなので、今年で62歳になるベテランのベーシスト。1986年にスムース・ジャズのジャンルで初リーダー作。僕は21世紀に入るまで、ブロンバーグの存在を知らなかった。ブロンバーグの存在を知ったのは、神保彰とのプロジェクト、JBプロジェクトを通じてで、つい最近である。

ブロンバーグのベースは、相当に高いテクニックと豊かなスイング感、骨太でソリッドな切れ味の良い重低音、存在感抜群のベースである。そんなアコベらしいアコベで、ソロ・パフォーマンスを展開するのだから、聴く方としては興味津々。

これまでに、ブロンバーグはリーダー作の中で、ベース・ソロのアルバムを何枚か出している。どれもが優れた出来ばかりなので、どの盤から聴き始めても良いのだが、僕はこの『Hands』の収録曲のユニークさに惹かれる。
 

Brian-bromberghands

 
レッド・ツェッペリン(以降、Zepと略)の「Black Dog」、ビートルズのメドレー「Day Tripper-Yesterday-Eleanor Rigby」、スティングの「King of Pain」とロック畑の曲を選んでいる。スタンダード曲も沢山あって聴きどころ満載。そして、エレベのイノベーター、ジャコ・パストリアスの名曲「Teen Town」をアコベでカヴァーしている。

特に、Zepの「Black Dog」はハードロックの名曲で、速くて難度の高いフレーズがてんこ盛りなんだが、このややこしい曲をアコベ一本で弾き切っている。ベース一本でロックンロールのビートは「どうするんじゃぃ」と半信半疑で聴いたが、これが見事で、弾き進めるフレーズに強弱のビートを付けて、ロックなオフビートを出しているのだ。これ、テクとセンスが無いと出来ない技である。

そして、ジャコの「Teen Town」。ジャコのベース・ソロはエレベだった。弦の響きを電気的に増幅するので、速いフレーズも弾けた訳だが、これをブロンバーグはアコベでやっている。アコベは弦の電気的な増幅が出来ないので、手でしっかりと弦を弾かなければならない。当然、しっかり弾く分、速いフレーズは苦手なはずだが、ブロンバーグはほぼジャコの様に、アコベで「Teen Town」をカヴァーしている。いやはや素晴らしいテクニックだ。

ロックな曲も、ジャコの曲も、スタンダード曲もし全てアコベ一本で弾き切る。どの曲も、リズム&ビートは、フレーズを弾き進める際、フレーズに強弱を付け、「ため」を織り込むことで、フレーズを弾き進める中で、リズム&ビートを同時供給している。これ、結構、難しいテクニックのはずで、これだけ見事に、フレーズを弾き進める中でリズム&ビートを同時供給するベースを僕は余り知らない。

全編、アコベのソロだけ、なんだが、そんな高度なテクニックを駆使して、歌心よろしく、リズム&ビートをソロ・フレーズと同時供給していく奏法が功を奏して、全編、全く飽きが来ない。録音状態も良く、ブロンバーグの生々しいアコベの低音が生々しく耳に迫ってくる。

ジャズ・ベースが好きなジャズ者の方々にお勧め。特に、実際にベースを弾いたことがあるジャズ者の方に聴いて頂きたい、ブロンバーグのソロ盤である。
 
 

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