聴いて楽しく、体が揺れる盤
ブルーノート・レーベル時代のブルー・ミッチェルのリーダー作って、ファンキー・ジャズというよりは、その先、ジャズロックやソウル・ジャズを志向していたと思うのだ。聴いて楽しい、聴いて踊れるジャズ。そんなエンタテイメント志向のジャズを目指していたように思うし、それをしっかり実現していた。
Blue Mitchell『Down with It!』(写真左)。1965年7月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Chick Corea (p), Gene Taylor (b), Al Foster (ds)。昨日ご紹介した前リーダー作『The Thing to Do』と同じメンバーでの演奏。前作が1964年7月の録音だから、約1年後の同一メンバーでの録音になる。
いきなり、ジャズロック風の「Fungii Mama」で幕を開ける。これが、演奏自体のかなり充実していて、曲の良さもあって、聴き応えのある演奏になっている。この1曲だけでも、この盤は「買い」だと思わせるくらいの、典型的なジャズロック。
うへ〜と思っていたら、2曲目は、ちょっとモーダルなファンキー・ジャズ「Mona's Mood」になって、グッとクールでアーバンな雰囲気にガラッと変わる。でも、演奏の底に濃厚に漂っているのは、軽快でカラッとした「ファンクネス」。ミッチェル&クックのフロント2管のファンキーなユニゾン&ハーモニーが、そのファンクネスを更に深める。
3曲目は素敵なモーダルなバラード「Alone, Alone and Alone」。我が国のトランペットの第一人者、日野皓正作の名バラードである。間と音の拡がりを活かした、いかにも「和ジャズ」風なモーダルなバラード。ミッチェルのトランペットに哀愁感が漂い、ブリリアントで柔和な吹き上げと共に、映えに映える。
4曲目「March On Selma」以降は、ミッドテンポの落ち着いた雰囲気の、クールでアーバンなファンキー・ジャズ〜ジャズロックな曲が続いて、来ていて、思わず体が揺れるし、無意識に足でリズムを取っていたりする。
このバンド・メンバーの、特にリズム・セクションのノリが凄く良い。チックのファンキーな躍動感溢れるピアノも良いし、とりわけ、アル・フォスターのドラミングがジャズロックにばっちりフィットしている。ジーン・テイラーのファンキー・ベースが、このバンドの演奏の「底」をガッチリと押さえている。
名盤という類の盤では無いが、聴いて楽しい、聴いて体が揺れる、クールでアーバンなファンキー・ジャズ〜ジャズロック盤である。楽しむジャズとして良い雰囲気をしていて、聴き込んで、1965年のジャズの流行スタイルがとても良く判る。好盤である。
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