ジャズ喫茶で流したい・251
ジャズにおいて「初リーダー作」は、そのリーダーであるジャズマンの「個性」を確実に反映している。ジャズにおいては、それぞれジャズマン毎の「個性」が非常に重要で、この「個性」が希薄だと、どのジャズマンの演奏を聴いても「皆同じに聴こえる」ということになる。
これでは、即興演奏が最大の特徴であるジャズにおいて、ジャズマンの存在意義が無くなる。よって、ジャズにおいては、それぞれジャズマンの個性が重要であり、それぞれのジャズマンの初リーダー作では、その「個性」を前面に押し出すプロデュースを施すのが通例である。
Bill Charlap『Souvenir』(写真左)。1995年6月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Scott Colley (b), Dennis Mackrel (ds)。現代のバップ・ピアニスト、ビル・チャーラップのメジャー・デビュー作になる。チャーラップは、1966年10月生まれなので、初リーダー録音当時、28歳と8ヶ月。一流ジャズマンとしては、少し遅いメジャー・デビュー作になる。
メジャー・デビュー作と言えば、その内容は初リーダー作に準ずるもの。チャーラップも、1991〜3年に、マイナー・レーベルに初リーダー作を録音しているが、マイナー・レーベルからのリリースなので、数も少なく、その盤はなかなかお目に(お耳に?)かかれない。そういう意味では「メジャー・デビュー盤=初リーダー作」と位置づけて良いかと思う。
さて、このメジャー・デビュー盤、聴いて面白いのは、チャーラップのピアノの個性が明確に出ていること。今までの他のピアニストとは明らかに違う響きがある。
基本はバップ・ピアノ。しかし、フレーズの響きが従来のバップっぽく無い。幾何学っぽく(ちょっとモンクっぽい)、モーダルな弾き回しだけど「判り易い」。弾きっぷりは流麗。バップなマナーの中での「耽美的でリリカルな」弾き回しがユニーク。
そんなチャーラップの個性が、このメジャー・デビュー盤にギッシリ詰まっている。冒頭の「Turnaround」を聴けば、それが良く判る。オーネット・コールマンの曲を選曲していて、このコールマンの曲をバップ・ピアノで弾き回していく。
しかも、緩やかなフレーズから盛り上げていくユニークなアレンジ。左手の和音が「幾何学っぽく」、右手のフレーズがモーダル。コールマンの曲の個性を良く捉え、チャーラップのピアノの個性で、今までに聴いたことのない、バップな演奏に仕立て上げている。
この盤を聴いて、僕は一気にチャーラップのピアノが「お気に入り」になった。現代のネオ・ハードバップの先端を行く、従来のモダン・ジャズ・ピアノを見直し、焼き直し、新しい響きやフレーズを盛り込んで「深化」させていく。
チャーラップは、現代のジャズにおいて「進取の気性に富む」ピアニストの1人であり、このメジャー・デビュー盤では、個性的で見事なパフォーマンスを披露している。
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