ジャズ喫茶で流したい・250
米国や欧州では一流の人気ジャズマンとされるが、我が国では「さっぱり」というジャズマンが結構いる。昔は海外レーベルのアルバムは、日本のレコード会社が契約して、日本のレコード会社経由で、我が国で流通していた。日本のレコード会社と契約した海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は良いが、契約していない海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は、我が国では全く流通しないということになる。
これでは、日本のレコード会社と契約していないと、海外レーベルのレコードは手に入らない、ということになるのだから、何だか閉鎖的な話である。ネットの時代になって、CDやデジタル音源が日本のレコード会社抜きに、ダイレクトに購入出来る様になって、そんな閉鎖的な話はほとんど聞かなくなった。逆に我が国で売れる見込みが無いと扱わない、という日本のレコード会社の企業姿勢が、日本のレコード会社の存在意義を矮小化している。
Tom Harrell『Oak Tree』(写真左)。2020年11月24, 25日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tom Harrell (tp, flh), Luis Perdomo (p, Fender Rhodes), Ugonna Okegwo (b), Adam Cruz (ds)。米国では「現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者」とされるトム・ハレルのリーダー作。ハレルのワンホーン・カルテット盤になる。
リーダーのトム・ハレルであるが、現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者とされるが、我が国ではほとんど無名に近いのではないか。ハレルは1946年6月生まれなので、今年で76歳の大ベテラン、レジェンド級のトランペッターである。
リーダー作も30枚以上、参加セッションは数知れず。米国では、これだけ人気の一流トランペッターなのだが、我が国では「さっぱり」である。僕は21世紀には入るまで、トム・ハレルの名前を知らなかった。
さて、このハレルの新作、聴けば、ハレルのトランペットの成熟度合い、伸びのあるストレートな音色、流麗で歌心溢れるアドリブ・フレーズ、味わい深い「間」を活かした吹き回し。確かに、大ベテラン、レジェンド級のトランペッターであることが良く判る。このトランペットは良い。もっと広く、ジャズ者の皆さんに聴いて貰いたい気持ちで一杯である。
ビ・バップ、アフロ・キューバン、クラシック志向、心地よいスムース・ジャズなど、幅広いスタイルのジャズを展開してきたが、この盤では、じっくりと落ち着いた、モーダルな「ネオ・ハードバップ」。印象的なユニゾン&ハーモニー、スムースなアドリブ・フレーズ、柔らかく落ち着いた力強い吹き回し、暖かい安らぎを感じる音世界。この新作でのハレルのトランペット、本当に良い味出してます。
ピアノのルイス・ペルドモ、ベースのウゴナ・オケグォ、ドラマーのアダム・クルーズ、この精鋭リズム隊、これまた、味わい深いリズム隊で、ハレルの暖かい安らぎのあるトランペット&フリューゲルホーンを、緩急自在、変幻自在、硬軟自在にサポートする。このリズム隊あってのハレルのトランペットである。実に良いリズム隊だ。
アルバム・タイトルが『Oak Tree』=「樫の木」。英語圏では「逆境に耐える十字架の木であったり、男性的な力と聖木として崇められていることが多い」とのこと。なんか、この新作のハレルの「柔らかく落ち着いた力強い吹き回し」に通じる、実に良いタイトルですね。ジャケットも不思議と雰囲気があって良い感じ。ハレルの晩年の代表作としても良い佳作だと思います。
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