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2022年9月10日 (土曜日)

エルヴィンの「ショーケース」盤

この人のドラミングは個性的。1曲聴き込めば直ぐに判るほど強い個性。粘りのあるシャープなドラミング。そして、何本腕があるんだ、この人のタイム感覚はどうなってるんだ、と思うほどの圧倒的なポリリズム。フロント楽器をポリリズムで煽るところなんぞは圧巻である。その人とは、Elvin Jones(エルヴィン・ジョーンズ)。

Elvin Jones『Puttin' It Together』(写真)。1968年4月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts, ss, fl, piccolo), Jimmy Garrison (b)。ジョー・ファレルのサックスがフロント1管のピアノレス・トリオ。リーダーのエルヴィンのドラムのパートナーとして、同じコルトレーン・カルテットに所属していた、ギャリソンがベースを担当している。

この盤、エルヴィン・ジョーンズのブルーノート・レーベルでの初リーダー作。プロデューサーは、デューク・ピアソンに変わっている。エルヴィンは、自らのリーダー作の場合、ピアノレスが多い様な気がする。恐らく、ポリリズミックなドラミングでリズム&ビートをリードするエルヴィンにとって、リズム楽器としてのピアノは必要が無いんだろう。旋律楽器としてのピアノは、管楽器があるから必要が無い。
 

Elvin-jonesputtin-it-together
 

この盤は、エルヴィン・ジョーンズの「ドラミングのショーケース」の様な盤。エルヴィンのドラムの個性の全てがこの盤に詰まっている。力感溢れるポリリズミックなドラミングはエルヴィンならでは。しかし、しばらく聴いていると、コルトレーン・カルテットでの叩きっぷりと雰囲気が違うことに気がつく。この盤でのドラミングがエルヴィンのオリジナルなドラミングで、コルトレーン・カルテットでは、コルトレーンの好みのドラミングに合わせていることが良く判る。

これがレジェンド級のジャズ・ドラマーの卓越したテクニックである。エルヴィンのドラミングは、ファンクネスを底に忍ばせた、ジャズ・ファンクなドラミング。加えて、途方も無いポリリズムなドラミングで、硬軟自在、緩急自在、変幻自在な、モーダルなフレーズにパーフェクトに対応している。あらゆるモーダルなフレーズに、それぞれに適したリズム&ビートを供給している。そんなポリリズミックなドラミングに淀み、迷いは一切無い。

充実のブルノート・レーベルでの初リーダー盤。エルヴィンのリズム&ビートに合わせて、ギャリソンの骨太ベースが、強靱なベースラインをフロントに供給する。そんなリズム隊をバックにして、フロントのファレルはとても気持ちよさそうに、サックスをフルートを吹きまくる。自由度の高い、ハイテクニックなモード・ジャズだが、演奏全体が流麗で明るい。当時のジャズの閉塞感を全く感じさせない快作である。
 
 

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