デフランセスコの初リーダー作
今年の8月25日、Joey Defrancesco(ジョーイ・デフランセスコ)が逝去した。現代の現代ジャズ・オルガニストの代表的存在の1人。マルチ・インストルメンタルな面も持ち合わせ、トランペット、サックスにも一定のテクニックを保持し、時には、ボーカルも披露した。しかし、51歳での逝去。惜しまれて余りある、余りに早すぎる逝去であった。
Joey Defrancesco『All of Me』(写真)。1989年の作品。ちなみにパーソネルは、Joey Defrancesco (org), Lou Volpe (g), Alex Blake (el-b), Buddy Williams (ds)、そして、特別ゲストとして、Houston Person (ts)。Columbiaレーベルからのリリース。
デフランセスコの初リーダー作であり、同時にメジャー・デビュー作でもある。デフランセスコは1971年生まれなので、17歳での初リーダー作であり、メジャー・デビュー作であった。騒がれたという記憶は無いが「早熟の天才」ですね。
ジャズにおいて、初リーダー作とは、そのリーダーを担うジャズマンの個性がクッキリと浮かび出た、そのジャズマンの個性をしっかり確認出来るものなのだが、このデフランセスコの初リーダー作についても例に漏れない。
この盤には、デフランセスコのオルガンの個性が溢れている。デフランセスコのオルガンを理解するには、避けて通れない、というか、まず最初の頃に聴いて欲しい初リーダー作である。
ジャズ盤紹介本やネットのジャズマン情報のデフランセスコ評の中では、デフランセスコは、ジャズ・オルガンの祖、ジミー・スミスの影響を強く受けているとされる。しかし、この初リーダー作を聴けば判るのだが、ジミー・スミスの忠実なフォロワーではない。
確かにジミー・スミスっぽいのだが、ジミー・スミスのオルガンを、ストレートでシンプルな弾きっぷりに変えて、ポップで判り易いアドリブ・フレーズを弾きまくるところが、デフランセスコの個性。音の基本は「アーバンでコンテンポラリーで小粋な」オルガン。ハモンドB-3を自由に操り、様々なフレーズを弾き込む様は「凄み」さえ感じさせる。
このデフランセスコの個性を前面に押し出して、それまでのジャズ・オルガンでは演奏し得なかった、カーペンターズの「Close to You(遙かなる影)」のカヴァーをやっている。この「Close to You」とタイトル曲「All of Me」が素晴らしい出来なのだ。
ジミー・スミスの「ダイナミズム」と「躍動感溢れるファンクネス」を踏襲しつつ、「アーバンでコンテンポラリーで小粋な」フレーズで、ストレートでシンプルに弾き進めている。
この初リーダー作をリリース後、マイルス・ディヴィスのバンドに参加して、アルバム『Amandla』ではキーボードを担当している。つまりは、マイルスも認めた、ジャズ・オルガニストの逸材だと言える。そのデフランセスコならではの個性が、この初リーダー作に詰まっている。
我が国では話題にほとんど上がらないデフランセスコの初リーダー作だが、僕は評価している。良い盤だと思います。
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