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2022年8月10日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・246

「小粋なジャズ」盤を探索している中で、昔から、その存在は知ってはいたが、聴いたことが無かった盤に出会うことが、ちょくちょくある。

特に、ネットの情報、それも、ジャズ評論家の方々などの「ジャズの専門家」では無く、一般のジャズを聴くのが趣味の、いわゆる「ジャズ者」の方々の記事やツイートがとても参考になっている。特に「小粋なジャズ」盤の探索については、ネットの「ジャズ者」の方々の情報やツイートに結構お世話になっている。

J.R. Monterose『In Action』(写真左)。1964年の録音。ちなみにパーソネルは、J.R. Monterose (ts), Dale Oehler (p), Gary Allen (b), Joe Abodeely (ds)。玄人好みの知る人ぞ知るテナー・マン、モンテローズのイリノイ州の小都市で吹き込んだ作品。オリジナルLPは数百枚現存するかどうかと言われた「幻の名盤」である。

J.R. Monterose(J.R.モンテローズ)は1927年生まれ。1950年代は、気力体力充実なミュージシャンとして、一番溌剌とした年頃で、ブルノート・レーベルとジャロ・レーベルに秀作を残している。モンテローズのサックスのパフォーマンスと作曲家としての実績は一定の評価を得ていて、彼のテナーは、他のテナーマンの影響を受けているとはいえ、十分に個性的なものだった。

但し、モンテローズは自分自身をアンダーグラウンドなジャズマンと思っていた節があり、1960年代以降は、米国のローカル都市(アイオワ州シーダーラピッズ)や、オランダ、デンマークでの長期滞在(1960 年代後半から 1970 年代半ばまで)での小クラブでのセッションが主な活動だったようだ。
 

Jr-monterosein-action

 
モンテローズのテナーの個性は、スタッカートの多用、高音の独特の節回し、太くて疾走感溢れる低音。速いフレーズは少したどたどしく(ちょっと「ヘタウマ」)、スローなフレーズはゴツゴツしている。そんなモンテローズの個性が、この『In Action』では明確に現れていて、聴き応えがある。

冒頭のモンテローズのオリジナル曲「Waltz For Claire」に思いっ切り「やられる」。どこか切ない、独特の哀愁感を漂わせながら、ゴリゴリ、ブリブリ、重低音なブラスの響きを振り撒きながら、悠然とワルツなフレーズを吹き上げていく。

これが堪らない。1950年代のブルーノート盤やジャロ盤のパフォーマンスに比べて、ほど成熟していて、テクニックも向上、味のある、モンテローズならではの個性的なテナーをブイブイ聴かせてくれる。

続く2曲目の「I Should Care」、5曲目の「Lover Man」、も絶品である。情感タップリに、ユッタリとしたテンポで、哀愁感を振り撒きながらのバラード演奏には、思わずしみじみと聴き入ってしまう。

この盤の録音時、モンテローズは37歳。ジャズマンとしては中堅の年頃で、モンテローズは中堅テナー・マン。自らの個性を十分に理解し、ミッド〜スロー・テンポの演奏に絞って、成熟した、モンテローズとして完成されたテナーを聴かせてくれる。何も、テクニカルに速いフレーズを吹きまくるだけが、ジャズ・テナーでは無い。

こういった、昔の「幻の名盤」が、ダウンロードした音源で聴くことが出来るとは、いい世の中になったもんだと思う(笑)。CDでもリイシューされたらしいが、お目にかかったことが無かったから、今回、良い体験をさせて貰ったと喜んでいる。これだから「小粋なジャズ」盤の探索は止められないのだ。
 
 

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