ミンガス・ミュージックの確立
Charles Mingus(チャールズ・ミンガス)。モダン・ジャズにおける希有のベーシストである以上に、バンド・リーダーとして、アレンジャー&コンポーザーとしての実力が突出していると僕は感じる。何時の時代でも、ミンガス・バンドの構成力、演奏力、展開力は非常似高いレベルを維持しているのは立派だ。
Charles Mingus『The Clown』(写真左)。邦題『道化師』。1957年2月13日と3月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Shafi Hadi (as, ts), Jimmy Knepper (tb), Wade Legge (p), Dannie Richmond (ds), Jean Shepherd (narration, track 4)。
1956年の名盤『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』の次のリーダー作。パーソネルを見渡すと、前作からガラッとメンバーを入れ替えている。前作のパーソネルとの大きな違いは、この「道化師」は、あまり有名で無いメンバーが採用されている、ということ。この盤以降、ミンガス・バンドのリズム&ビートと預かるドラムのリッチモンドと、トロンボーンの盟友ネッパー以外は、有名どころのメンバーは見当たらない。
しかし、そんなちょっと地味なメンバーなので、この盤、前作の『直立猿人』と比べて、内容は劣るのだろうだろうと思いきや、前作の『直立猿人』の内容を上回るレベルの、ミンガス・バンド史上、ベスト5に入る位の内容の充実度を誇るのだから、ミンガスのバンド・リーダーとしてのバンド・サウンド作りの手腕の凄さ、そして、何より、メンバーの演奏力と個性を最大限に発揮させる、アレンジャー&コンポーザー賭しての実力の高さを実感する。
この『道化師』というアルバム、ミンガス・ミュージックの個性と特徴の全てが反映されている、といって良い位の内容の充実度高さ。バンド・サウンドのアレンジの基本は「エリントン・ミュージック」ということは判るが、ミンガスのアレンジは、エリントン・ミュージックを更に発展させ、ミンガス独特の音の重ね方と響かせ方、そして、それぞれの楽器のアドリブ展開のスペースの絶妙な配置を施して、独特で唯一無二な「ミンガス・ミュージック」を確立させている。
アンサンブルの「音の塊」が整然と重厚に響き、ドラマチックな展開を増幅させる。整然としたジャジーでブルージーな響きは、否が応でも「ジャズ」を強烈に感じさせる。そして、特徴的なのは、ユニゾン&ハーモニー、アンサンブルが画一化せず、自由度が高く、バリエーションに富んでいるところ。サウンドのパーツそれぞれがカラフルなのは、ユニゾン&ハーモニー、そして、アンサンブルの自由度が高く、バリエーションに富んでいるからだろう。
そんな「確立されたミンガス・ミュージック」がこの『道化師』にギッシリ詰まっている。前作『直立猿人』よりも旋律が美しく、展開がドラマチックで聴き易い。ミンガスのブンブン鳴り響く重低音ベースも心おきなく堪能出来る。
「ミンガス・ミュージック」は何たるか、を感じるには絶好の一枚が、この『道化師』。かなり重厚な内容のモダン・ジャズなので、その迫力に押されるかもしれないが、これが「ジャズ」である。スピーカーの前で、そこそこの音量で、この「ミンガス・ミュージック」を体で受け止めていただきたい。
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