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2022年8月21日 (日曜日)

ファンキー&モード・ジャズの好盤

デューク・ピアソン(Duke Pearson)は、1932年生まれで、1980年に47歳で早逝している。1980年に亡くなったということは、僕がジャズを本格的に聴き始めて、数年しか経っていない「ジャズ者初心者」の頃に亡くなった訳だが、当時はしっかり、ジャズ雑誌も精読していたのだが、全く印象に無い。

ピアソンのピアノがお気に入りになったのは、ブルーノートの諸盤がカタログ順にCDリイシューされた時、『Tender Feelin's』というピアノ・トリオの秀作に出会ってからである。

ピアソンのピアノは「インテリジェンス溢れる粋なフレーズ、タッチのリリカルな響き」。まず、これが良い。そして、ピアソンはアレンジャー&コンポーザーの才能にも優れたものがある。自身のピアノ、作曲、アレンジ、3拍子揃った優れたジャズ・ピアニストであった。

Duke Pearson『Wahoo!』(写真左)。1964年11月21日の録音。ブルーノートの4191番。ちなみにパーソネルは、Duke Pearson (p), Donald Byrd (tp), James Spaulding (as, fl), Joe Henderson (ts), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds)。バードのトランペット、スポルディングのアルト・サックスとフルート、ヘンダーソンのテナー・サックスがフロント3管のセクステット編成。

録音メンバーを見渡すと、テナーのヘンダーソンとアルトのスポルティングはモーダルなジャズの名手。ベースのクランショウとドラムのローカーはモーダルなジャズに適応するプログレッシブなリズム隊。トランペットのバードはビ・バップからの強者だが、新しいモーダルな演奏にも順応する優れたジャズマン。
 

Duke-pearsonwahoo

 
こんなメンバーで固めると、この盤、ばりばりモーダルで難解なジャズが展開されているのか、と思いきや、そうでは無いから、この盤は一筋縄ではいかない。

ピアソン以下、メンバーは皆、アドリブ展開の時には、モーダルなフレーズを連発しているのだが、アルバム全体の雰囲気は、ピアソンの優れたアレンジによって、小粋で聴き味の良い、アーバンでお洒落なファンキー・ジャズに仕立て上げられている。ピアソンのアレンジ能力の高さが窺い知れる。

加えて、フロント3管のユニゾン&ハーモニーをベースとしたアレンジが、ファンクネスを強く感じさせて、モード・ジャズの難解さを中和している。といって、こってこてファンキーなジャズにはならない。モードの響きをしっかりと残して、ジャズとして、アーティスティックな響きを醸し出している。所謂「俗っぽいジャズ」になっていないのだ。何処か気品漂うジャズに仕立て上げられているのは、ピアソンのアレンジャー&コンポーザーの才能の「賜」だろう。

ピアソンのピアノは音数が厳選されていてリリカル。バードとスポルディングの2管はファンクネス漂う吹き回しで「さすが」。ヘンダーソンのテナーはモーダルに捻れて素敵なパフォーマンスを連発。クランショウのベースはモーダルなベース・ラインをウネウネと弾き出し、ロッカーのドラミングはプログレッシブ。

そんなモーダルな演奏が、小粋で聴き味の良い、アーバンでお洒落なファンキー・ジャズ風にアレンジされているのだから、聴き応えは十分である。意外と注目度が低いピアソン盤だが内容は良好。ファンキー&モーダルなジャズの好盤です。
 
 

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