ファンキー&モード・ジャズの好盤
デューク・ピアソン(Duke Pearson)は、1932年生まれで、1980年に47歳で早逝している。1980年に亡くなったということは、僕がジャズを本格的に聴き始めて、数年しか経っていない「ジャズ者初心者」の頃に亡くなった訳だが、当時はしっかり、ジャズ雑誌も精読していたのだが、全く印象に無い。
ピアソンのピアノがお気に入りになったのは、ブルーノートの諸盤がカタログ順にCDリイシューされた時、『Tender Feelin's』というピアノ・トリオの秀作に出会ってからである。
ピアソンのピアノは「インテリジェンス溢れる粋なフレーズ、タッチのリリカルな響き」。まず、これが良い。そして、ピアソンはアレンジャー&コンポーザーの才能にも優れたものがある。自身のピアノ、作曲、アレンジ、3拍子揃った優れたジャズ・ピアニストであった。
Duke Pearson『Wahoo!』(写真左)。1964年11月21日の録音。ブルーノートの4191番。ちなみにパーソネルは、Duke Pearson (p), Donald Byrd (tp), James Spaulding (as, fl), Joe Henderson (ts), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds)。バードのトランペット、スポルディングのアルト・サックスとフルート、ヘンダーソンのテナー・サックスがフロント3管のセクステット編成。
録音メンバーを見渡すと、テナーのヘンダーソンとアルトのスポルティングはモーダルなジャズの名手。ベースのクランショウとドラムのローカーはモーダルなジャズに適応するプログレッシブなリズム隊。トランペットのバードはビ・バップからの強者だが、新しいモーダルな演奏にも順応する優れたジャズマン。
こんなメンバーで固めると、この盤、ばりばりモーダルで難解なジャズが展開されているのか、と思いきや、そうでは無いから、この盤は一筋縄ではいかない。
ピアソン以下、メンバーは皆、アドリブ展開の時には、モーダルなフレーズを連発しているのだが、アルバム全体の雰囲気は、ピアソンの優れたアレンジによって、小粋で聴き味の良い、アーバンでお洒落なファンキー・ジャズに仕立て上げられている。ピアソンのアレンジ能力の高さが窺い知れる。
加えて、フロント3管のユニゾン&ハーモニーをベースとしたアレンジが、ファンクネスを強く感じさせて、モード・ジャズの難解さを中和している。といって、こってこてファンキーなジャズにはならない。モードの響きをしっかりと残して、ジャズとして、アーティスティックな響きを醸し出している。所謂「俗っぽいジャズ」になっていないのだ。何処か気品漂うジャズに仕立て上げられているのは、ピアソンのアレンジャー&コンポーザーの才能の「賜」だろう。
ピアソンのピアノは音数が厳選されていてリリカル。バードとスポルディングの2管はファンクネス漂う吹き回しで「さすが」。ヘンダーソンのテナーはモーダルに捻れて素敵なパフォーマンスを連発。クランショウのベースはモーダルなベース・ラインをウネウネと弾き出し、ロッカーのドラミングはプログレッシブ。
そんなモーダルな演奏が、小粋で聴き味の良い、アーバンでお洒落なファンキー・ジャズ風にアレンジされているのだから、聴き応えは十分である。意外と注目度が低いピアソン盤だが内容は良好。ファンキー&モーダルなジャズの好盤です。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて 【New】 2022.03.13 更新。
★ まだまだロックキッズ 【New】 2022.03.13 更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から11年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« ジャズ喫茶で流したい・247 | トップページ | ブルーノートのポップなジャズ »
コメント