« ブランフォードの東京録音盤 | トップページ | ファンキー&モード・ジャズの好盤 »

2022年8月20日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・247

ゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba) は「キューバの至宝」と呼ばれるジャズ・ピアニスト。1963年5月、キューバはハバナの生まれ。今年で59歳、来年は還暦。もはや、キャリア的にはベテランからレジェンドの域に差し掛かっている。僕がゴンサロの出会ったのは、1990年『Discovery: Live at Montreux』を手にした時。あの頃、ゴンサロは弱冠27歳。あれから30年以上、ゴンサロのピアノの志向はブレていない。

ゴンサロのピアノは超絶技巧ではあるが、リリカルでメロディアス、そこはかとなくアーシーでワールド・ミュージック的な雰囲気が漂い、カリプソな雰囲気も見え隠れする。回りくどいことは無く、判りやすい光速のパッセージでアプローチは意外と直線的。ビ・バップ・マナーの超絶技巧な高速ピアノと、間を活かした印象派マナーの耽美的でリリカルなピアノの双方を両立させた個性が特徴。

Gonzalo Rubalcaba Trio『Skyline』(写真左)。2021年の作品。ちなみにパーソネルは、Gonzalo Rubalcaba (p), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。ゴンサロが若き日に師事したジャズメンと再会したいという長年の希望を受けて実現した再会セッションの記録。現代のアコベのレジェンド、ロン・カーターと、現代のポリリズミックなドラマーのレジェンド、ジャック・デジョネットがリズム隊で参入している。
 

Gonzalo-rubalcaba-trioskyline

 
ゴンサロのピアノの個性をしっかり記録しつつ、ゴンサロのピアノの成熟を聴いて取れる、内容の濃いピアノ・トリオ盤である。相変わらずの超絶技巧であるが、若かりし頃の「どうだ、凄いでしょ」的な大向こうを張った弾き回しでは無く、硬軟自在、緩急自在、音とリズムをしっかりと選びつつ、機微溢れる、クールでブルージーでモーダルなピアノをじっくり聴かせてくれる。弾きまくるゴンサロ、内省的なゴンサロ、ゴンサロのピアノの良いところがこの盤にしっかり記録されている。

ゴンサロの成熟したピアノの良いところをグイグイと引き出しているのが、ロンのベースとデジョネットのドラム。ロンのべースは、ゴンサロのモーダルなピアノの底をしっかりと支えて安定感抜群。デジョネットのポリリスミックなドラミングは、ゴンサロのピアノに推進力と変化のタイミングを与え続ける。素晴らしいインタープレイの応酬。ゴンサロのピアノが映えに映える。

ゴンサロ健在。ロンも健在、デジョネットも健在。凄まじく、内容濃く、新しい響きを湛えたインタープレイを繰り広げるレジェンド級のピアノ・トリオ。その演奏の数々は凄みが感じられるほど、硬派で切れ味の良いもので、まだまだ若手ピアノ・トリオには及ばない、様々な「粋」なアプローチと弾き回しは、後に名盤と呼ばれるに相応しい内容ではないかと感じて、聴いていて何だか「嬉しく」なりました。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« ブランフォードの東京録音盤 | トップページ | ファンキー&モード・ジャズの好盤 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ブランフォードの東京録音盤 | トップページ | ファンキー&モード・ジャズの好盤 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー