優れた「現代のネオ・モード盤」
スティーヴ・デイヴィス(Steve Davis)。1967年4月生まれ、米国マサチューセッツ州出身。今年で55歳。ベテランの域に達したトロンボーン奏者である。リーダー作は1994年以来、平均1〜2年に一枚のペースでリーダー作をリリースし続けている。
1989年には、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに加入している。若かりし頃からの有望なトロンボーン奏者だったことが判る。サイドマンとしてのアルバム参加も多く、人気のトロンボーン奏者である。が、我が国では、ほとんど無名。Criss Crossレーベルの殆ど専属状態だったので、日本のレコード会社が扱うことも無く、CDショップも直輸入するには、無名であるが故、リスクが高かったのだろう。
僕は、Chick Corea+Originの『Live at The Blue Note』で、サイドマンとして参加している、スティーヴ・デイヴィスを知った。テクニックが確かなトロンボーンで、複雑なモーダル・フレーズを多種多彩に吹き上げるトロンボーンに、ちょっとビックリした思い出がある。また、1997年に結成された「ネオ・ハードバップ」専門のグループ「One for All」のメンバーとしてのプレイも度々耳にしている。
Steve Davis『Bluesthetic』(写真左)。2022年2月、NYでの録音。Smoke Sessions Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Davis (tb), Peter Bernstein (g), Steve Nelson (vib), Geoffrey Keezer (p), Christian McBride (b), Willie Jones III (ds)。トロンボーン+ギター+ヴァイブがフロント3管のセクステット編成。管はスティーヴ・デイヴィスのトロンボーンのみ。あくまで、リーダーのディヴィスのトロンボーンが前面に出るラインナップ。
冒頭の「Encouragement」を聴くだけで、これは優れたモード・ジャズの演奏がメインだと判る。前奏の雰囲気などは、1960年代の新主流派の音世界を彷彿とさせるもの。いかにも「モード・ジャズ」的なフレーズの積み重ねで、モード好きの僕などは、この1曲だけでワクワクしてしまう。
確かに、1960年代の新主流派のモーダルな音世界が下敷きにあるのだが、アドリブ・フレーズの展開は「新しい」現代のモード・ジャズ風。ネオ・ハードバップならぬ「ネオ・モード」と言って良い位、新しい響きに満ちている。それでいて、難解なところは無く、スムーズでスインギーで判り易い。全曲、デイヴィスのオリジナル曲で固められているのだが、ディヴィスの作曲の才にも感心する。
これって重要なことで、モードを採用しているので、硬派な純ジャズ風に聴こえるが、フレーズの展開は「流麗」そのもの。それだけ取り出せば、スムース・ジャズと言っても通用するくらいの「滑らかさ」。丸みを帯びて、柔らかい拡がりのある、それでいて音の芯がしっかりとしたトロンボーンの音色。その流麗さについては、ディヴィスのトロンボーンの特徴的な音色が貢献している。
現代のモード・ジャズ、今のモード・ジャズの優れた演奏がこの盤に詰まっている。モーダルなフレーズが芳しいジェフ・キーザーのピアノをメインとしたリズム・セクションも良い演奏で、バンド全体の音を支え、盛り立てている。ギターとヴァイブは、あくまで、ディヴィスのトロンボーンの引き立て役に徹していて清々しい。優れた内容の「現代のモード・ジャズ盤」である。
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