ブルーノートのポップなジャズ
それまでのブルーノート・レーベルに無い「ポップ&イージーリスニング志向」。1960年代後半、この「ポップ&イージーリスニング志向」な盤は売れ筋ではあるので、今までのブルーノートに無い「大衆迎合」志向の盤を、敢えて,ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンは制作したのだと思う。そんなライオンの想いに対して、ピアソンはその優れたアレンジ・テクニックでバッチリ応えている。
Duke Pearson『Sweet Honey Bee』(写真左)。1966年12月7日の録音。ブルーノートの4252番。ちなみにパーソネルは、Duke Pearson (p), Joe Henderson (ts), Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (fl, as), Ron Carter (b), Mickey Roker (ds)。ヘンダーソンのテナー、ハバードのトランペット、スポルディングのフルート&アルト・サックスがフロント3管のセクステット編成。
とてもポップなファンキー・ジャズ仕立ての「イージーリスニング・ジャズ」な盤である。冒頭の「Sweet Honey Bee」の出だしを聴いていると、思わず、クリード・テイラーのCTIフュージョンかと思ってしまうほどのポップ&イージーリスニング志向。
出てくるフロント楽器が、スポルディングのフルートなので、これはCTIサウンドでは無いと思う。それにしても、見事なまでの「ポップ&イージーリスニング志向」のピアソンのアレンジであり、それにバッチリ乗ったスポルディングのフルートは「ソフト&メロウ」そのもので、既に「フュージョン・ジャズ」な雰囲気を先取りしている。
そんなピアソンのアレンジに、フロント3管はこれまたバッチリ応える。バカテク&吹きまくりのハバードが抑制されたトランペットで、ポップでメロディアスなフレーズを吹き上げる。もともとテクニックが相当に高いレベルにあるハバードである。キャッチャーで耽美的なメロディーを流麗に吹き上げ、ファンキーなフレーズは、モーダルに流れる様に吹き進める。
モード・テナーの申し子の様なヘンダーソンが、これまた、ポップでメロディアスなフレーズをばりばりモーダルなテナーで吹き上げていく。しかし、これが程良く抑制され、ウォームな音色で吹き上げるので、モード・ジャズにつきものの「難解さ」が皆無。判り易く、ラウンドなトーンで、モーダルなフレーズをイージーリスニング風に聴かせてくれる。
ポップ&イージーリスニング志向な演奏の中に「Big Bertha」の様な、硬派でストレートアヘッドなファンキー・ジャズがちゃっかり挿入されていて、ポップ&イージーリスニング志向な演奏になれ始めた耳に「ガツン」と渇が入る。硬派でストレートアヘッドなファンキー・ジャズだが、それぞれの演奏は、程良く抑制され、端正なパフォーマンスになっているので、とても整ったお洒落でアーバンなファンキー・ジャズになっていて、これはこれで聴き味抜群。この辺に、往年のブルーノートの矜持を感じる。
イージー・リスニング志向のジャズ盤ではあるが、フュージョンを先取りした「ソフト&メロウ」な演奏あり、程良く抑制された、硬派でストレートアヘッドなファンキー・ジャズな演奏あり、それぞれのソロ・パフォーマンスも、易きに流れず、しっかりと個性溢れる、バップなフレーズ、モーダルなフレーズを演奏しまくっているのだから、意外と「痛快」なアルバムである。
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