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2022年8月14日 (日曜日)

1960年代前半のジャマルの音

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)についての有名なエピソード、マイルスが麻薬禍から立ち直り、新しいクインテットを立ち上げる際、ピアニストとして、アーマッド・ジャマルに白羽の矢を立てたのは有名な話。結局、飛行機に乗るのが嫌で、マイルスの誘いを断った訳だが、この様に、ジャマルは米国では、デビューの頃から評価の高いピアニストだった。

しかし、我が国では人気のあるピアニストでは無い。ジャズ盤紹介本でも、ジャマルのリーダー作として挙がるのは『But Not For Me』(1958年)がほとんど。他にも優秀なリーダー作は沢山あるのだが、我が国での「アーマッド・ジャマル」の扱いは本当に小さい。しかし、米国では、コンスタントにリーダー作をリリースし続け、70枚超のリーダー作を世に送り出している。

Ahmad Jamal『At The Blackhawk』(写真左)。1961年11月、サンフランシスコのナイトクラブ「ブラックホーク」でのライヴ録音。Argoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。リーダーのジャマルとベースのクロスビーはシカゴ出身。ドラムのフォーニアは、ニューオリンズ出身でシカゴ在住。オール・シカゴのピアノ・トリオ。

ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。1960年代の終わり〜1970年代の作品は、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化。
 

Ahmad-jamalat-the-blackhawk
 

この『At The Blackhawk』、1961年11月のライヴ音源を聴いて判るのは、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選したシンプルな弾き回しから、シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた奏法に変化しつつあるジャマルをしっかりと捉えている。1950年代のラウンジ・ピアノっぽい雰囲気から、ダイナミックでファンキーなジャズ・ピアノに変化している。

この変化にはちょっと驚いた。1960年代の終わりには、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドへの変化は捉えられているが、1950年代のシンプルな弾き回しから、どうやって、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化したのか、良く判らなかったが、今回、「いきなり」の変化では無く、こういった、ダイナミックでファンキーなジャズ・ピアノを経由しているのが、この『At The Blackhawk』を聴いて良く判った。

ジャマルのピアノについては、テクニックに優れ、メリハリを強く付けるが、流麗なフレーズには、しっかりと「歌心」が宿っていて、強いタッチのフレーズも全く耳障りでは無い。これだけダイナミックにメリハリを付けたファンキーなピアノは、他に例が無い。この時代のジャマル独特の個性と言って良いかと思う。

1960年代前半のジャマルのリーダー作は、Argoレーベルに集中しているのだが、以前は入手が難しい盤ばかりだった記憶があるのだが、最近、Argoレーベルのオリジナル盤が結構、まとまってアップされている様で、ストリーミングで聴くことが出来るようだ。この機会を捉えて、一気に聴いてみたいと思っている。
 
 

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