1966年のバルカン・ジャズ
欧州ジャズは欧州ジャズで独自の進化、深化を続けている。ファンクネス濃厚、ばりばりスインギーで、ブルージーな米国ジャズの熱烈なファンからは、欧州ジャズは疎まれる傾向にあるが、欧州ジャズは欧州ジャズで立派な「ジャズ」である。北欧ジャズから始まって、英、仏、独、蘭などを中心に、欧州各国に、それぞれの国の個性を反映したジャズが根付いている。
特にベルリンの壁崩壊後は、東欧諸国のジャズの情報が入る様になり、特にネットの時代に入ってからは、東欧諸国のジャズもアルバムの聴き易くなった。今では、この東欧ジャズが、欧州ジャズの「主要なサブジャンル」の1つとなって、堅実にジャズを深化させている。東欧ジャズはそれぞれの国の民俗音楽などの個性がダイレクトに反映されているものが多く、聴いていてとても楽しい。
Dusko Gojkovic『Belgrade Blues』(写真)。1966年5月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Dusko Gojkovic (tp,flh), Sal Nistico (ts), Carl Fontana (tb), Nat Pierce (p), Mike Moore (b), Ronnie Zito (ds)。米国のジャズマン、カール・フォンタナとサル・ニスティコが、リーダーのゴイコヴィッチと3管フロントを組んだ、セクステット編成。
ベオグラードで開催されたフェスティバルに参加したウディ・ハーマン楽団、そのウディ・ハーマン楽団の腕利きメンバーが、ゴイコヴィッチのレコーディングに協力したらしい。その腕利きメンバーが、カール・フォンタナであり、サル・ニスティコである。そして、リズム・セクションも、と調べて見たら、やはり楽団メンバーであった。
数時間で録音は完了したとのことだが、そんな即席なセクステットの演奏とは思えない、しっかりとアレンジされた、端正でジャジーでスインギーな演奏に仕上がっている。ほんと、皆、良い音だしているのだが、面白いのは、米国ジャズの特徴がこの盤にはほとんど感じられない。音の雰囲気は欧州ジャズであり、旧ユーゴスラヴィアのバルカン・ジャズである。一流ジャズマンの表現力というのは、我々が想像しているよりも凄いのだ。
さすが周りを米国ジャズの一流どころで固めているので、ゴイコヴィッチのトランペットの「ノリ」と「張り」が違う。明朗に躍動的にスイングするゴイコヴィッチのトランペットは聴きものだ。当然、出てくるフレーズのここかしこに「バルカン」な雰囲気が散りばめられていて、米国ジャズとは違う、バルカン・ジャズの雰囲気が耳に新しく響く。
この盤、もともとは10インチ盤でリリースされたもので、オリジナルはジャズLP最難関といわれる超レア盤らしい。ゴイコヴィッチが、1961年に吹き込んだ初リーダー作『The International Jazz Octet』と1966年に吹き込んだ『Belgrade Blues』、この2枚の10インチ盤をカップリングにして、1973年、12インチ盤でリイシューされている。僕が聴いた盤は、この12インチ盤を紙ジャケットで完全復刻したCDである。
盤のタイトルが『ベオグラード・ブルース』。1966年にして、このタイトルで旧ユーゴスラヴィアで録音され、リリースされている。まだ「鉄のカーテン」が存在した時代。それだけ、東欧でもジャズのマーケットがしっかりと存在していたことが想像出来る。
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