スティックス・フーパーの新盤
1970年代、フュージョン・ジャズの中で一世を風靡したジャズ・ファンクなバンドが「クルセイダーズ(The Crusaders)」。ポップでファンキーなフュージョン・ジャズが素敵なバンドで、僕は大好きだった。
オリジナル・メンバーは、テキサス州のハイスクールで同級生だったウェイン・ヘンダーソン(トロンボーン)、ウィルトン・フェルダー (テナー・サックス)、ジョー・サンプル(キーボード)、スティックス・フーパー (ドラム)の4人。ベーシストはゲストだった。
このオリジナル・メンバーのうち、ドラム担当のスティックス・フーパー以外、既に逝去してしまった。スティックス・フーパーも、1938年8月生まれなので、今年で84歳になる。ここ10年以上、フーパーの名前を聞かないので、クルセイダーズ・サウンドって、もう歴史的な音になってしまったなあ、と思っていたら、スティックス・フーパーが突然、2010年以来、12年振りにリーダー作をリリースした。これはもう「ポチッとな」である(笑)。
Stix Hooper『Orchestrally Speaking』(写真左)。今年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、お馴染みのレジェンド Hubert Laws (fl), ロシア出身のEugene Maslov (p), スウェーデン出身のAndreas Oberg (g), 米国ニューオリンズ出身のJamelle Adisa (tp), 米国NY出身のScott Mayo (sax), 米国ロス出身のDel Atkins (b)。インターナショナルなボーダーレスのメンバー選定。
大ベテランがリーダー作を録音する際にありがちな、旧知の仲良しメンバーが集ったセッションでは無く、インターナショナルなメンバー選定というところに、フーパーの「やる気」を強く感じる。
さて、出てくる音といえば、クルセイダーズ・サウンドからファンクネスを薄めて、フュージョン・ジャズではなく、スムース・ジャズ寄りのアレンジを加えた感じの音世界。それでも、ファンクネス漂うグルーヴ感は一貫して、それぞれの演奏の底にあって、このグルーヴ感こそが、クルセイダーズ・サウンドのグルーヴ感に通じるもので、それは、取りも直さず、フーパーのドラミングが醸し出しているのだ。
フーパーのドラミングは、スムース・ジャズっぽくなってはいるが、その叩き方、リズム&ビートの傾向は、クルセイダーズ時代の頃と変わらない。フーパーが1983年に脱退して以来、20年弱が経過しているが、クルセイダーズのフーパーのリズム&ビートは健在である。多国籍なバック・バンドの演奏も内容の濃い、素敵な演奏で、リーダーのフーパーの標榜する「スムース・ジャズなクルセイダーズ」な音をしっかりと現実のものとしている。
今年4月のリリースなんだけど、ネットを見渡すと、ワールドワイドで、このスティックス・フーパーの新盤は話題になっていない。フーパーって過去の人扱いなのかな。でも、知らないジャズマンのリーダー作だったとしても、この新盤を聴くと、この盤、意外といける、って感じること請け合い。クルセイダーズのファンだった方々には、特に一聴をお勧めしたい「小粋なスムース・ジャズ」盤です。
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