パスのストーンズのカヴァー盤
ジャズ盤をいろいろ聴いていると、たまに「これ何」と聴き耳を立てる異色盤が出てくる。特に、1960年代後半、ジャズがポップス&ロックの潮流に押されて、人気のポップ音楽から聴き手を限定するマニアックな音楽になりつつあった頃、何とか、ポップス&ロックのファンに訴求する「カヴァー・ジャズ」が流行した。
つまり、当時流行っていたポップス曲やロック曲をジャズにカヴァーしてアルバム化する訳だが、ポップス曲やロック曲のコード進行はジャズのコード進行の標準とは違うものも沢山あって(特にレノン=マッカートニーの楽曲はジャズ化し難かった)、なかなか上手くいかない。加えて、アレンジのスキルにも問題があって、上手くカヴァー出来ないケースが続出した。
Joe Pass『The Stones Jazz』(写真左)。1966年7月20日の録音。Joe Pass (g), Bill Perkins (ts), Bob Florence (p, arr, cond), Ray Brown (b), John Guerin (ds), Victor Feldman (perc)、ここに、トロンボーンが3本、ギターが2本入って、スモールコンボ形式での演奏になる。
タイトルから類推出来る様に、この盤は、ローリング・ストーンズのヒット曲のカヴァー集。当時、ビートルズと人気を二分していたストーンズの有名曲をジャズ化している。もともと、ストーンズの楽曲はブルースを基調としていて、ビートルズの楽曲よりはジャズ化し易かったはず。確かに目の付け所は良かったと思う。
が、リーダーのジョー・パスは、バリバリ純ジャズ・ギターの「ヴァーチュオーゾ」。イージーリスニング・ジャズよろしく、耳当たり良くポップに、ストーンズの楽曲を弾き回すかと思いきや、これがまあ、徹頭徹尾「純ジャズ」なギターの弾き回し。テーマの旋律ですら、原曲をよく聴いていないと、ストーンズのヒット曲とはほとんど判らない(笑)。
しかし、このジョー・パスのギターの弾き回しについては、純ジャズとして聴く分には上質でハイテクニックなジャズ・ギターとして成立しているのだから面白い。つまりは、パスはこのストーンズのカヴァー盤で、ポップス&ロックのファンに訴求しようとは思っていなかった様で、ストーンズの楽曲の個性を上手くピックアックして、純ジャズなギターで、素敵なアドリブ・パフォーマンスを展開している。
演奏全体のアレンジは旧態依然としたスモール・バンドのアレンジで、ユニゾン&ハーモニーなども旧式の音作りで、これではポップス&ロックのファンに訴求する「カヴァー・ジャズ」としては成立しない。そんなパスのストーンズのカヴァー盤だが、違った側面の「不思議な魅力」があるから、ジャズは面白い。
まずは、ジョー・パスは根っからのジャズ・ギターのヴァーチュオーゾだということ再認識出来ること、そして、ストーンズの楽曲は意外とジャズ化するのに意欲が湧くものだと言うこと。しかしながら、この後、ストーンズの楽曲のジャズ・カヴァーがほとんど無かったのが意外。
ジャケットも当時のサイケデリック&ラヴ・アンド・ピースの流行を踏襲した「これがジャズ盤のジャケか」と戸惑うばかりのユニークなもの。それでも、パスのギターは「純ジャズ」しているのだから、この盤は面白い。
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