ECMレーベルの「米国ジャズ」
最近のECMレコードは、欧州各国の優れたジャズマンのみならず、米国の中堅クラスの優れたジャズマンのアルバムを制作している。以前は米国のジャズについては、ECMレコードの「音志向」に合わないところがあって、米国のジャズマンの、ECMレコードでのアルバム制作は希だった。
ただ、最近は、例えば、ヴィジェィ・アイヤー、クレイグ・テイボーン等など、米国ジャズの中堅ジャズマンが続々とECMと契約して、優れた内容のリーダー作をリリースしている。黒人(アフリカン・アメリカン)が中心だった米国ジャズの個性が、多国籍化して中和され、グローバル化してきたのが、主な理由だと思っている。
Mark Turner『Lathe of Heaven』(写真左)。2013年6月、NYの「Avatar Studios」での録音。ECMレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Avishai Cohen (tp), Joe Martin (b), Marcus Gilmore (ds)。
テナー・サックス奏者、マーク・ターナーがリーダー、アヴィシャイ・コーエンのトランペットとのフロント2管の「ピアノレスのカルテット」編成。アヴィシャイだけがイスラエル出身、ターナー以下、ベース、ドラムは米国出身。そんな米国+イスラエル連合バンドが、欧州ジャズの老舗レーベル、ECMレコードの下でレコーディングする。20世紀ではまず、無かったことだろう。
ブラッド・メルドーいわく「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。
今までの米国のテナー奏者は、基本的に「コルトレーン」の影を追っていたような所があったが、ターナーのテナーにはその傾向が希薄。響きや節回しは米国ジャズなんだが、米国ジャズのテナーマンの大凡が追いかけていた「コルトレーン」の影響が希薄なところが、ECMの「音志向」にフィットした理由なのかも、と睨んでいる。
米国ジャズらしい、クールではあるが、官能的でエモーショナルなテナーサックス。イスラエル・ジャズらしい、哀愁感豊かに朗々と鳴り響くトランペット。そんなテナーとトランペットによるモーダルな展開。ピアノが入ってない分、2本の管楽器のパフォーマンスの自由度が増して、欧州ジャズには無い、米国ジャズらしいオープンな拡がりのある、明るい音色のアドリブ展開がユニーク。それでも、耽美的で哀愁感漂い、リリカルな雰囲気は、ECMレコードの「音志向」をしっかりと反映している。
ターナーは1965年11月生まれなので、この盤の録音時は47歳。バリバリ中堅の年齢で「ECMレコードがプロデュースした米国ジャズ」を体現した。21世紀に入って、米国ジャズ、欧州ジャズの垣根が取っ払われつつあって、米国ジャズがグローバル化し始めている。そんな感覚を強く感じる、マーク・ターナーの『Lathe of Heaven』。
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