ジャズ喫茶で流したい・241
1970年代、和ジャズのピアニストは、管楽器に比べて、地味な存在が多かった。皆、テクニックは優秀、個性もしっかり備えているのにも関わらず、米国本場の有名ピアニストが常に優先され、もてはやされた。酷い時は、ちょっと聴いただけで、米国本場のピアニストの物真似、と揶揄されたこともある。
しかし、皆、一流のジャズ・ピアニストであったと思っている。しかも、シッカリとした個性を兼ね備えていたと思う。それでも、レコード屋ではなかなかリーダー作に出会うことは無かった。僕はジャズを聴き始めた頃、専ら、大学近くの「秘密の喫茶店」で聴かせて貰っていた。
板橋文夫トリオ『濤(Toh)』(写真左)。1976年3月1日、東京、第一生命ホールでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、板橋文夫 (p), 岡田 勉 (b), 楠本卓司 (ds)。和ジャズを代表するピアニストの1人、板橋文夫の初リーダー作である。
板橋のピアノの個性が良く判るピアノ・トリオでの録音。僕はこの盤を1979年に聴いている。そして、今回、約40年振りに再び聴くことが出来た、懐かしの盤である。
当時は「マッコイ・タイナーにそっくり」なんて言われたが、そんなことは全く無い。左手の和音の弾き方が同じ「ハンマー奏法」なだけで、和音の重ね方とかファンクネスの濃淡など、タイナーとは全く異なる個性である。タイナーよりも弾き回しが冷静で、モーダルな展開がアーティスティックに響くところが良い。
2曲目「Good-bye」がとても良い曲。板橋の自作曲であるが名曲だと思う。タッチは硬質だが、弾き回しは「耽美でリリカル、そして叙情的」。板橋独特の個性であり、もちろんタイナーには無い個性である。
LP時代、B面を占めていたタイトル曲「濤」は壮大な展開。約20分弱の長尺な演奏だが、ダレたところが全く無い。ずっとテンションを張ったまま、ヴァイタルな弾き回しを展開する板橋は素晴らしい。これがライヴでの演奏なのだから恐れ入る。究極のモーダルな即興演奏が展開される。
これが板橋の初リーダー作。ジャズ・ピアニストとしては完成されていて、その実力は、国際的に十分に通用するレベルである。これが1976年の演奏なのだから、我が国にジャズ演奏のレベルは当時からして、相当に高かったことが良く判る。和ジャズのピアノ・トリオ名盤の一枚。
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