マエストロのECM初リーダー作
マンフレート・アイヒャーによって、1969年に設立された欧州のジャズ・レーベル「ECM(Edition of Contemporary Music)」。ECMレーベルは、ジャズについては「典型的な欧州ジャズ」を旨とする。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。
このECMについては、1970年代後半、僕がジャズを聴き始めた頃、新興の欧州ジャズのレーベルとして、我が国での有名になりつつあった。ECMのジャズは、従来の伝統的なハードバップとは全く対極の「沈黙に次いで最も美しい音」を基本とす
る、即興演奏をメインとした演奏自由度の高いニュー・ジャズ。当時、硬派なベテラン・ジャズ者の方々からは、これはジャズじゃない、と結構煙たがられたレーベルである。
ECMは設立の1969年から、常に充実した活動を続け、21世紀に入っても、ECMレーベルの勢いは衰えることは無い。衰えるどころか、新しいジャズマンを各国から発掘し、コンスタントに新盤をリリースし続けている。今年の3月から、そんなECMレーベルの、ECM独特の音を表現するアルバムを20枚チョイスした〈21世紀のECM〉キャンペーンがスタートしている。
Shai Maestro『The Dream Thief』(写真左)。2018年4月の録音。ECMの2616番。邦題『夢盗人』。ちなみにパーソネルは、Shai Maestro (p), Jorge Roeder (b, except 1,6,8), Ofri Nehemya (ds, except 1,6,8)。イスラエル・ジャズの才能あふれる若手ピアニスト、シャイ・マエストロの初のECMでのリーダー作品になる。トリオ演奏とソロ演奏がほど良く混在し、マエストロのピアノの個性が良く判る展開になっている。
ベーシストはペルー出身、ドラマーはイスラエル出身。ECMらしい、ユニークな出身のメンバーが集うピアノ・トリオ。出てくる音は、明らかにECMの音。ピアノ、パーカッション、ドラム。空間たっぷりの演奏スペースに、耽美的にリリカルに即興演奏が展開する。間と響きを活かした音世界。墨絵の様に漂うエコー。クリスタルで硬質なピアノのタッチが即興演奏のエッジを立たせ、その印象的なフレーズを全目に押し出してくる。
ECMのアイヒヤーによってプロデュースされた、ECMの音を纏ったイスラエル・ジャズ。マエストロのピアノの個性が、ECMの音によって増幅され、より明確になっている。アイヒヤーの的確なプロデュースによって、マエストロは、ECMデビュー盤でありながら、ECMでの代表作を手に入れた。21世紀に入っても、ECMの音は健在。そして、そのECMの音の「担い手」の新しい才能もしっかりと確保されている。まだまだECMレーベルは安泰である。
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