イスラエル・ジャズらしい新盤
イスラエル・ジャズの特徴はと言えば、ネットを紐解くと「イスラエル、ジューイッシュ(ユダヤ)の哀愁を帯びたフレーズやメロディ、または近隣アラブ諸国〜北アフリカ地域の音楽的要素なども取り入れられており、結果生成された今までにないハイブリッドなジャズ・サウンドが特徴」とある。
そんな「イスラエル・ジャズ」。もともと若い頃から、米国以外の、エスニックもしくはアフリカンな「ワールド・ミュージック系」のジャズが好きで、イスラエル・ジャズが流行始めた1990年代後半頃から、機会があるにつけ、イスラエル・ジャズの盤を聴いてきた。特に、ECMレーベルからリリースされるイスラエル・ジャズの盤は、レーベル独特の深いエコーと相まって、その特徴が増幅され、聴き応えのあるものになっている。
Avishai Cohen『Naked Truth』(写真左)。2021年9月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p), Barak Mori (b), Ziv Ravitz (ds)。アヴィシャイ・コーエンは同姓同名で2人のジャズマンがいるが、この盤のリーダーは、トランペッターのアヴィシャイ・コーエン。全員イスラエル&テルアビブ出身のワンホーン・カルテットである。
全編、曲のタイトルに「Naked Truth」が振られていて、組曲風のアルバム構成になっている。演奏全体の雰囲気は、全曲、幽玄で哀愁感漲る、浮遊感と音の「間」が芳しい、ゆったりとした曲調。耽美的でリリカルなコーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットが、そんな哀愁感や音の陰りを的確に表現していく。このマイナー調の哀愁感とエスニック感が、全く以てイスラエル・ジャズそのものに感じる。
リズム隊のリズム&ビートは、ほとんどフリー・インプロヴィゼーションに近い、スインギーなビートとは全く無縁の自由度の高いもの。これが、コーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットに絡んで、少し憂いを帯びた薄暗い、空間の広がりと奥行きを感じさせる、独特な音世界を創り出している。これがこの盤の最大の個性。この盤はリズム&ビートでさえ幽玄であり、深遠であり、独特の浮遊感がある。
不思議な音の魅力が詰まったイスラエル・ジャズ盤である。浮遊感溢れる旋律の哀愁感、音の重なりは明らかにイスラエル・ジャズの雰囲気濃厚。アルバム全体の音の統一感も素晴らしい。スインギーなビートの効いたジャズとは全く対極にある、ほとんどフリーに近い、自由度の高いインプロビゼーション。実にイスラエル・ジャズらしい逸品であり、実にECMレーベルの盤らしい逸品である。
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