ピアノ・トリオの代表的名盤・98
最近、リッチー・バイラークのリーダー作をいろいろ聴き直していて、この盤をかけた時、このバイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚について、当ブログで取り上げていないのに気がついた。いやはや驚いた。
Richard Beirach『Eon』(写真)。1974年11月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach (p), Frank Tusa (b), Jeff Williams (ds)。耽美的でリリカルで多弁なピアニスト、リッチー・バイラークの初リーダー作。
リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、彼はバークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは「理詰め」の雰囲気が強い。
初リーダー作の冒頭に「Nardis」を収録したのが誤解のもと。「Nardis」は、耽美的でリリカルなバップ・ピアニストとされるビル・エヴァンスの十八番曲。我が国では、ビル・エヴァンスは「耽美的でリリカルな」ピアニストと誤解されることが多い。余りに短絡過ぎる評価だと思うが、その偉大なピアニストが十八番曲とした「Nardis」を弾くので、バイラークは今でも「耽美的でリリカルな」ピアニストと分類されることが多い。
が、この初リーダー作を隅々までしっかり聴き通すと、バイラークは単なる「耽美的でリリカルな」ピアニストに留まらず、とにかく「多弁」なピアニストであることが判る。この「多弁」がバイラークのピアノの最大の個性。
「耽美的でリリカルな」ピアニストの特徴として、「間」と「音の広がり」を活かしたインプロビゼーションが挙げられるが、バイラークはその反対。音符を敷き詰めた様に「多弁」なフレーズを弾きまくる。タッチは「耽美的でリリカル」。しかし弾きっぷりは「シーツ・オブ・サウンド」と言って良いくらい「多弁」。
しかし、その「多弁」な弾きっぷりが、テクニックが確かで端正、そして、タッチの響きが「耽美的でリリカル」なので、意外と五月蠅くない。特に速いフレーズにおける、バイラークのピアノのタッチと弾きっぷりは「クラシック・ピアノ」の雰囲気が色濃く反映されている。この弾きっぷりが五月蠅いならば、クラシック・ピアノの速いフレーズは全て「五月蠅い」ということになる。
バイラークは、単に「耽美的でリリカルで多弁なピアニスト」に留まらず、フリー&アヴァンギャルドな志向のピアノに走ったり、現代音楽風のピアノの様な無調の響きを醸し出したりするところが、チック&キース&ハービーなどの「新主流派世代」の括りのピアニストだと思う。故に、ニュー・ジャズが中心の、ECMレーベルのピアノ盤の中ではちょっと異質な雰囲気がする。
初リーダー作は、そのリーダーであるジャズマンの個性と特徴が如実に反映されている、というが、このバイラークの初リーダー作にもそれが言える。この盤を聴けば、バイラークのピアノが何たるか、をしっかり捉えることが出来る。バイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚。名盤です。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて 【New】 2022.03.13 更新。
★ まだまだロックキッズ 【New】 2022.03.13 更新。
・遠い昔、懐かしの『地底探検』
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から11年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« ジャズ喫茶で流したい・236 | トップページ | スムース・ジャズ化のT-SQUARE 『WISH』 »
コメント