北欧のピアノ・トリオの「今」
「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。
21世紀に入っても、ECMレーベルの活動は衰えることは無い。北欧系、東欧系、イスラエル系の有望なジャズマンを積極的に発掘し、ECMらしいニュー・ジャズをリリースし続けている。マンフレート・アイヒャーは今年で79歳。ECMの総帥プロデューサーとしてまだまだ盛んである。
Tord Gustavsen Trio『Opening』(写真左)。2021年10月、スイスにての録音。ちなみにパーソネルは、Tord Gustavsen (p, electronics), Steinar Raknes (b, electronics), Jarle Vespestad (ds)。リーダーのピアニスト、トルド・グスタフセンは、ノルウェー出身のジャズ・ピアニスト。ECMからのトリオ作品としては5作目になる。
墨絵の様な、漂うが如き、芯の入った音の広がり。ゆったりとした展開のインタープレイ。そこに、ECMレーベル独特の「限りなく静謐で豊かなエコー」がかかる。静謐かつ深遠にて耽美的な、そして、どこか一筋の光が差し込んで来る様な音世界。マイナーな和音の重ね方が「北欧ジャズ風」。北欧ジャズ独特の「不思議な開放感」が心地良く耳に響く。
グスタフセンの内省的で耽美的なピアノが映える。広がりと間に重きを置いた、ゆったりとした弾きっぷりだが、しっかりとしたタッチで音を重ねる。ノルウェーの実力派ベーシスト、スタイナー・ラクネスが、変幻自在なベースで、演奏のベースラインを際立たせる。同じくノルウェー出身のヤール・ヴェスペスタの繊細なスティック捌きと硬軟自在なブラシワークが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支える。
叙情的でリリカルな旋律が淀みなく淡々と流れて行く、スイング・ジャズの対極にある演奏。時に出てくるマイナー調のゴスペルっぽい響きは北欧ジャズ独特の響き。この盤は、現代の北欧ジャズの「今」を、ECMレーベルのピアノ・トリオの「今」をじっくりと聴かせてくれる。
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