真摯でポジティヴなピアノ盤です
「小粋な」ジャズ盤を聴こう、と、まだ聴いたことの無い盤の中で、有望な盤と当てをつけては聴いている。すると、意外とまだ聴いたことの無い盤が沢山あって、これがまた、意外と内容のある盤が沢山ある。21世紀に入って、新しく出てくるジャズ盤の「内容の平均点」が上がったのを実感する。駄盤、凡盤の類が圧倒的に少なくなった。
Bill O'Connell『A Change Is Gonna Come』(写真左)。May , 2021年5月13&14日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill O’Connell (p, Rhodes), Lincoln Goines (ac-b, el-b), Steve Jordan (ds), Craig Handy (ts, ss), Pedrito Martinez (perc)。
1953年、NY生まれ、ラテン・ジャズ界の大御所のバンドへの参加や、ジャズ界の巨匠(チェット・ベイカーやソニー・ロリンズ、デイヴ・ヴァレンティン等)との共演歴も持つピアニスト、ビル・オコンネルのリーダー作。様々なフォーマット編成でコンスタントに新作を発表しているオコンネル。オコンネルのリーダー作には、どの盤にも一貫した「コンセプト」に基づいて録音されているのが良く判る。
オコンネルはバランスの取れた「作曲家、アレンジャー、楽器奏者」であり、ニュージャージー州のラトガース大学のニューブランズウィックキャンパスにあるメイソングロス芸術学校でジャズピアノを教えている「教育者」でもある。
オコンネルのジャズは「人間皆平等でポジティヴ」がコンセプトの様に感じる。様々な人種の様々な幅広い音楽スタイルを取り込み、分け隔て無く、素晴らしいジャズにアレンジし、演奏する。そんなフラットな音楽性をメインとしたジャズがこの盤にも溢れている。
収録曲を聴けばそれが良く判る。ファンク、ブルース、サンバ、カリプソが中心の、幅広い音楽スタイルを取り込んだ明るい軽快なサウンド。オコンネルは、ピアノ自体は「総合力」を武器とした個性で、その「総合力」を全面的に発揮して、ポジティヴな曲調の演奏をメインとしている。これはオコンネルのピアノ・パフォーマンスの「ポリシー」なんだろう。
今回は、タイトルを見れば良く判る、「A Prayer for Us」「Chaos」など、最近の米国で起こった人種的偏見、政治的混乱、コロナ禍等の様々な問題を振り返った曲もあって、ジャズの持つ個性のひとつ「社会的問題の反映」を扱った演奏もあり、聴き応えがある。
オコンネルのピアノは「総合力」に富んだ流麗なピアノ。そのピアノをオコンネルの優れた「アレンジ力」が際立たせている。オコンネルのアレンジはどれもが優秀で、聴きどころ満載。何かの個性や特徴が突出したジャズ盤では無いが、ネオ・ハードバップを基調とした、真摯でポジティヴなピアノ盤として、聴き応えのある優秀作だと思う。
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