60年代「ブルーベック3」の快作
ジャズには多くの「発掘音源」や「未発表音源」がある。これはもう1970年代辺りから、有名盤のLPリイシュー時に「テイク違い」で収録されたり、CDでのリイシュー時には「ボーナス・トラック」として収録されたり、はたまた、未発表音源を1つのアルバムとしてリリースしたり、とにかく沢山の「発掘音源」や「未発表音源」が出回っている。
ただ、未発表音源を1つのアルバムとしてリリースする場合は、そのリーダーのジャズマンの「人気」が重要みたいで(つまり売れるかどうか、やね)、とにかく良く出るのは、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、そして、マイルス・デイヴィス。この3人については、正式なレーベルからのリリースである「正式盤」として、未発表音源が良く出てきた。
『Dave Brubeck Trio : Live from Vienna 1967』(写真左)。1967年11月12日、ウィーンでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Gene Wright (b), Joe Morello (ds)。
「スクエアに揺れる」変則スイング・ピアニスト、ディヴ・ブルーベックの正式な「発掘音源」。ブルーベックの正式な「発掘音源」は珍しい。が、米国、欧州では今でも人気があるピアニストなので、需要はあるのだろう。
1967年のこの時期のブルーベックは、今回のトリオに、アルト・サックスのポール・デスモントを加えた「最高のカルテット」で安定したパフォーマンスを発揮していた時期。資料によれば、参加予定だったポール・デズモンドが飛行機に乗り遅れるというアクシデントにより急遽、ピアノ・トリオ編成で公演することになったらしい。
ブルーベックのカルテットは、流麗でリリカルなデスモントのアルト・サックスがあるから評価出来る、なんていう暴論がある。今まで、デスモント抜きのトリオ編成での音源がほとんど出てこなかったので、何とも言えなかったが、このトリオ演奏を聴くと、このトリオの演奏レベルの高さ、トリオの個性の強烈さが浮き出てきて、このトリオだけでも成立する、素晴らしいトリオ演奏である。
加えて、ブルーベックはスイングしない、と評価の低い我が国のジャズ・シーンであるが、どうして、このライヴ盤を聴けば、ブルーベックは十分にスイングしている。独特の「間」と「スクエアに揺れる」スイングである。現代音楽の様な、硬質でエッジの立ったタッチが紡ぎ出すフレーズは、プログレッシヴであり、エモーショナル。ブルーベックは、オフ・ビートに乗って、スクエアに硬質にスイングする。
ジーン・ライトのベース、ジョー・モレロのドラムのリズム隊も、オフ・ビートに乗って、スクエアに硬質にスイングするブルーベックを好サポートする。時に独特の「間」に対応し、時に変則拍子を繰り出して、ブルーベックのピアノを鼓舞し、サポートする。
独特の「間」を活かしつつ、スクエアに硬質にスイングするブルーベックは、変則拍子に柔軟に対応する。現代音楽、現代クラシックに通じる様なピアノの弾きっぷり。この前衛性、この強烈な個性が、米国や欧州のジャズ・シーンで受ける所以だろう。
しかし、デズモンドが飛行機に乗り遅れるというアクシデントによって、ブルーベック、モレロ、ライトのトリオ演奏の素晴らしさが確認できたのだから、何が幸いするか判らない。とにかく個性溢れる、素晴らしいトリオ演奏である。こういう「発掘音源」は大歓迎である。
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