また、コルトレーンの未発表音源
ジョン・コルトレーンの人気は未だ衰えない様だ。またまた「未発表音源」が発掘され、正式盤としてリリースされた。「John Coltrane奇跡のライブ音源発見」「音楽史を揺るがす大発見」と、宣伝のキャッチコピーは凄い表現を採用している。ちょっと大袈裟過ぎやしないか、と感じつつ、思わず訝しく思ってしまう(笑)。
John Coltrane『A Love Supreme : Live In Seattle』(写真左)。1965年10月2日、ワシントン州シアトル、ペントハウスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane, Pharoah Sanders (ts). Carlos Ward (as), McCoy Tyner (p), Donald Rafael Garrett, Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。
コルトレーンの「黄金のカルテット」に、ファラオ・サンダース(ts) ~カルロス・ワード(as)~ドナルド・ギャレット(b) が加わった、計7名のセプテット編成。「至上の愛」は難度の高い曲と記憶するが、黄金のカルテットに3名のサポートを加えた7名編成で、分厚いアンサンブルが展開される。メンバーそれぞれの演奏力の高さが聴いて取れる。
演奏される『至上の愛』は、コルトレーンの生涯で、たった2回しか公のステージで演奏されなかったと伝えられる組曲。その組曲の幻の3回目のライヴ音源の発掘である。これまで『至上の愛』は、スタジオ盤と65年のフランスのジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音の2種類の演奏がリリースされていた。が、今回発掘されたシアトルでのライヴ演奏が録音されていたことは記録に残っていなかった、とのこと。
今回のライヴ盤の『至上の愛』は、4つのインタールードを挟み、4パートから成る組曲すべてが収録された貴重な音源。僕は、スタジオ録音盤の『至上の愛』しか聴いたことが無かったので、ライヴでの『至上の愛』は、スタジオ録音盤をどこまでライヴで再現しているか、が興味の中心だった。
スタジオ録音盤は、スタジオ録音であるが故、何度も取り直しが出来る。編集も比較的柔軟に対応出来る。よって、スタジオ録音盤の『至上の愛』は理路整然とした、リハーサルをしっかり積んだ、破綻の無い整った演奏だった。今の耳で聴けば、スピリチュアル性はしっかり担保されていたが、アヴァンギャルド性はちょっと後退気味な表現だった。
さて、今回のライヴ盤ではどうか。ちょっと録音が悪い分、大人しい感じの演奏に聴こえる。それでも、7人編成でこれだけ厚みのあるアンサンブルが取れるのは凄いこと。よくこれだけ難しい組曲を、ここまで理路整然とライヴ演奏出来るものだ、と感心する。さすがライヴ演奏だけあって、それぞれの演奏に個々の想いと個性が反映されていて、アヴァンギャルド性もしっかり担保されている。
録音バランスもあまり良く無く、エルヴィンのドラムがやたら前面に出てくる。主役=リーダーのコルトレーンのサックスがちょっと引っ込み気味なのが残念だが、音的には、しっかりとコルトレーンしていて、『至上の愛』はやっぱりコルトレーン率いる黄金のカルテットの演奏に限るなあ、と改めて思ったりする。
ライヴ音源なので、エルヴィンのドラム、タイナーのピアノ、ギャリソンのベースのロングソロもしっかり収録されている。しかし、これだけ、思いっ切り強烈な個性を持ったジャズマン達が、コルトレーン・ミュージックの志向を汲んで、コルトレーンの音世界を表現するのだから恐れ入る。どれだけの演奏テクニックを持っているんだか、感心することしきり、である。
このライヴ盤は、コルトレーン入りの黄金のカルテットによる『至上の愛』のライヴ演奏が聴けるところに最大の価値がある。録音の音質、バランスの問題はあるにせよ、生きているうちに『至上の愛』のライヴ演奏が聴けたことは幸いであった。ペントハウスのショーを録音した故ジョー・ブラジルと、50年後にテープを発見したスティーブ・グリッグスの2人に「感謝」である。
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