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2022年5月23日 (月曜日)

硬派な「映画音楽カヴァー集」

21世紀に入ってから、ジャズマンの「多国籍化」が進んでいるが、1970年代から80年代にかけて、欧州ジャズの台頭というトレンドがあった。もともと北欧では1960年代からジャズが浸透していたが、特に、1970年代から80年代にかけての欧州ジャズの台頭については、国で言うと「イタリア、フランス、ドイツ」だろう。特に、イタリア・ジャズの台頭は目を見張るものがあった。

Franco Ambrosetti『Movies』(写真左)。1986年の録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp, flh), John Scofield (g), Geri Allen (p, key), Michael Formanek (b), Daniel Humair (ds), Jerry Gonzalez (perc)。タイトル通り、イタリアのレジェンド・トランぺッター、フランコ・アンブロゼッティによる映画音楽作品集。

Franco Ambrosetti(フランコ・アンブロゼッティ)は、イタリア系スイス人。スイスのルガーノ(イタリア語圏)の生まれ。1941年生まれ。今年で81歳のレジェンド。1960年代以降は主にイタリアを中心に活動している。この『Movies』の録音当時は45歳、バリバリの中堅トランペッターである。

1950年代以降の映画音楽を中心に選曲されている様で、ジャズの中でも「ジャズ化」が極めて珍しい「The Magnificent Seven / 荒野の7人」や、ビートルズ映画の「Yellow Submarine」など、異色の映画音楽カヴァーである。「Yellow Submarine」など、フリーに傾いたり、限りなく自由度の高いモーダルな演奏に傾いたり、当時、ジャズの先端を行く「新伝承派」の音が色濃く反映されている。
 

Franco-ambrosettimovies

 
スタンダード化されている「Summertime」はリリカルでストレート・アヘッドな切れ味の良い演奏。「Chan’s Song」や「 Good Morning Heartache」などのバラード演奏は歌心溢れる耽美的なブロウ。

このアルバムには、個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」ジョン・スコが参加していて,アンブロゼッティのストレートなトランペットとの絡みとユニゾン&ハーモニーがとても官能的。

NYの選りすぐりの中堅で固めたバック・メンバーとのインタープレイは実にスリリング。映画音楽作品集だからといって、安直な「イージーリスニング・ジャズ」にならないどころか、思いっ切りストレート・アヘッドな演奏は素晴らしいの一言。

この映画音楽作品集は、かなり硬派な、当時としても、新しい印象のハードバップな演奏になっていて、聴き応え十分。ジョン・スコを始めとするバックを支えるメンバーの好演も、アンブロゼッティの充実したインプロビゼーションに大きく貢献していて立派だ。

この盤、タイトルと収録曲の曲名を見て、イージーリスニング・ジャズな映画音楽のカヴァー集と思うなかれ。2曲目の「Summertime」辺りで、もう一度、頭に戻って聴き直すこと必至です。
 
 

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