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2022年5月30日 (月曜日)

チックの完成された初リーダー作

チック・コリア(Chick Corea)が亡くなって1年が過ぎた。僕が大好きなジャズ・ミュージシャンだったので、その急逝の報にはビックリした。というか大ショックである。しばらく元気が出なかった。その半年前には、リモートではあるが、元気な姿でNHKに出演していたのになあ。享年79歳。まだまだ活躍出来る年頃だったのになあ。

僕が大好きなジャズマンだったチック・コリアなので、このブログでは初期の頃に、リーダー作のレビュー記事を早々にアップしている。もう10年以上も前の事になる。中には拙いレビュー記事もあるし、もうちょっとシッカリと聴き込んで書き直したい記事もある。チック・コリアが亡くなって1年。これを機会に、チック・コリアのリーダー作を順に振り返ってみようと思った。

Chick Corea『Tones for Joan's Bones』(写真左)。1966年11月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Woody Shaw (tp), Joe Farrell (ts, fl), Steve Swallow (b), Joe Chambers (ds)。チック・コリアの初リーダー作である。この初リーダー作のリリース時には、まだ、マイルス・デイヴィスのグループには入っていない(参加は1968年後半)。

収録された4曲中の3曲、1曲目「Litha」、3曲目「Tones for Joan's Bones」と4曲目「Straight Up and Down」がチック作。この3曲については、チックの独特のフレーズ、和音、リズム&ビートがしっかり反映されていて素晴らしい出来である。チック・コリアの個性、いわゆる「チック節」が全開、何回聴いても、冒頭の数フレーズで、これってチックの曲かな、と判るほど。スタンダード曲の2曲目「This is New」についても、アレンジと弾き回しが明らかに「チック節」で固められていて、アルバム全体の楽曲演奏の統一感が素晴らしい。
 

Tones_for_joans_bones_2

 
他のジャズマンからしても、このチック作の楽曲は魅力的だったようで、「Tones for Joan's Bones」と「Straight Up and Down」は、コリアの初リーダー作の前、ブルー・ミッチェルが、コリアをフィーチャーしたアルバム『Boss Horn』に収録。「Litha」は、このコリアの初リーダー作の約半年後、コリア入りのスタン・ゲッツ・カルテットによって録音され、アルバム『Sweet Rain』に収録されている。

この初リーダー作にして、チックのピアノの個性は完成されている。後にお得意となる「ラテンな雰囲気のフレーズ」はまだ影を潜めているが、リリカルで耽美的、それでいて、硬質で力感溢れるタッチ、バップ・ピアノとは異なる、完全モーダルな弾き回し。そして、チックの紡ぎ出す音の重ね方が独特の響きを生み出している。モーダルな新主流派の音をスタート地点とした個性であり、以前の先達ジャズ・ピアニストのスタイルのフォロワーの雰囲気は微塵も無い。

バックのそれぞれのメンバーも、チックの音世界の創造に大きく貢献している。フロント2管を司るトランペットのウッディ・ショウとテナーのジョー・ファレル、そして、リズム隊のスティーヴ・スワローのベース、ジョー・チェンバースのドラム、それぞれがチックの個性と音世界を十二分に理解し、チックの音世界を現出している。このパーソネルのまま、チック・コリア・クインテットとして、パーマネント・グループ化しても良い位の素晴らしいメンバーである。

このチックの初リーダー作、意外に我が国では評価が芳しく無い。が、チックを理解する上で、この初リーダー作は外せない。ピアニストとしての個性、作曲の才能とセンス、リーダーとしてのグループ・サウンドのまとめ方など、既にそれらの非凡な才能がこの初リーダー作に溢れている。チック者としては、この盤は絶対に外せないのだ。
 
 

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