総合力勝負のチェスナットです
ハードバップ全盛期から多様化の時代に生まれた、いわゆる「新伝承派」のピアニストが気になっている。特に、ケニー・カークランド、マルグリュー・ミラー、サイラス・チェスナット、マーカス・ロバーツなど、強烈な個性は無いが、「総合力」で勝負するピアニスト達が気になっている。
というか、そう言えば、新伝承派のピアニストって、強烈な個性は無いが、「総合力」で勝負するピアニストばかりではないか。ハードバップから多様化の時代のジャズの演奏トレンドを「最良」として、それまでに無い新しい解釈や新しいアレンジを施して、ハイ・テクニックで演奏する。
演奏の雰囲気や響きはハードバップから多様化の時代からの借用であって、ピアニストとしての強烈な個性はあまり必要とされないのが「新伝承派」なので、どうしても「総合力」で勝負するピアニストが主流になるのは仕方の無いことか。でも、しっかり聴いていると、タッチとか手癖とか得意フレーズとか、「総合力」に隠れて、どこかに必ず個性が潜んでいるところが聴きどころと言えば、聴きどころ。
Cyrus Chestnut『Earth Stories』(写真左)。1995年11月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Cyrus Chestnut (p), Eddie Allen (tp), Antonio Hart (as), Steve Kirby (b), Alvester Garnett (ds)。サイラス・チェスナットの7枚目のリーダー作になる。エディ・アレンのトランペット、アントニオ・ハートのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。
右手はシンプルで美しいシングルトーンで、明確に歯切れ良くメロディアス。左手は中低音部を幅広に使いつつ、重く分厚いコード演奏を繰り広げる。メロディーラインは典雅、しかしながら、重厚な左手によるコード弾きは限りなくソウルフル。演奏の雰囲気や響きはハードバップから多様化の時代からの借用ではあるが、そこに「それまでにない個性」を偲ばせている。
さすがチェスナット、「総合力」で勝負するピアニストとしての面目躍如。強烈な個性は無いが、ハードバップから多様化の時代からの借用をベースに、そこはかとなく「個性」を発揮しているところが「ニクい」。この辺りが「新伝承派」のピアニストを理解するポイントだろう。
米国においては、既にベテランの域に達していて実績も十分。しかしながら、我が国においては「決定的な代表作が未だに無い」という理由で人気はイマイチ。新伝承派のピアニストは、こぞって「総合力」で勝負するピアニストばかりなので、決定的な代表作に恵まれないのは仕方の無いこと。
それでも、リーダー作は水準以上の内容を保っていて駄作が無いので、どのリーダー作を選んでも、安心して聴くことが出来るのは素晴らしい。アレンジも十分な工夫がなされていて、ブルージーでありながらゴスペル的でストレートな響きが実に「ソウルフル」。聴いていて心地良い「新伝承派」なジャズである。
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