ナットとヴィンセントに外れ無し
「小粋な」ジャズ盤を求めて、まだ聴いたことの無い、「小粋な」内容そうなアルバムを発掘しては選盤している。基本的に、冒頭1曲目の演奏をじっくり聴いて、これは「小粋な」ジャズ盤として、2曲目以降を聴くか、1曲目で聴くのを止めるか、を判断している。逆に、パーソネルを確認して、これは「小粋な」ジャズ盤に違いない、と一気に聴き通す場合もある。
Nat Adderley Quintet『We Remember Cannon』(写真左)。1989年11月18日、スイスのアールブルク「Moonwalker Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Vincent Herring (as), Arthur Resnick (p), Walter Booker (b), Jimmy Cobb (ds)。リーダーのナット・アダレイのコルネットと、ヴィンセント・ハーリングのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。
このライヴ盤の録音年は1989年。純ジャズ復古が実現し、新伝承派やM-BASE派の硬派なネオ・ハードバップがトレンドになっていた時代。リーダーのナットは58歳。全盛期を過ぎて、大ベテランの域に差し掛かった頃。さすがに1980年代のナットのリーダー作は「平均点」レベルの盤が多いのだが、ヴィンセント・ハーリングとフロントを張ったアルバムは、どれもが充実した内容で外れが無い。
このライヴ盤『We Remember Cannon』は、内容的には「キャノンボール・アダレイ」のトリビュート。ただ選曲を見渡して見ても、キャノンボールの自作曲は無く、ナットの自作曲も有名な「Work Song」1曲。他の6曲はスタンダード曲。どの辺が「キャノンボール・トリビュート」なのか良く判らないが、内容的には、白熱した素晴らしいライブ演奏が堪能出来る優れもの。
ヴィンセントのアルト・サックスが絶好調で、雰囲気的に「キャノンボール寄り」で吹きまくっている。この絶好調のヴィンセントのアルト・サックスに煽られて、ナットのコルネットもバリバリに吹きまくっている。良きフロント2管である。バックのリズム隊では、ジミー・コブのドラムが元気一杯。このライブ盤の時でコブは60歳。ドラムソロも交えて、バンバン叩きまくって、フロント2管を鼓舞している。
昔のハード・バップ期、ファンキー・ジャズ華やかなりし頃に戻った様な、熱気溢れるヴァイタルな演奏がとても良い。各曲のアドリブ・フレーズも、引用含めて「小粋な」ものが多く、聴いていて楽しい。やっぱり、ナットのヴィンセントとフロントを張った盤には外れが無い、と思っていたが、このライヴ盤についても「大正解」。「小粋な」ライヴ盤として、結構楽しめる内容です。
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