「変わらない」という素敵な個性 『The Tower of Power!』
Dexter Gordon(デクスター・ゴードン、愛称「デックス」)は、生涯、そのテナー・サックスのスタイル、奏法を変えなかった。そのスタイルを変えない、というところが最高の個性で、デックスのテナーは、どのリーダー作でも「大らかで誠実でどこか哀愁感漂う」テナーは変わらなかった。実に素敵な個性である。
Dexter Gordon『The Tower of Power!』(写真左)。1969年4月2日&4日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), James Moody (ts,track 1 only), Barry Harris (p), Buster Williams (b), Albert "Tootie" Heath (ds)。冒頭の「Montmartre」のみ、デックスとムーディーのダブル・テナー、他は、デックス1管フロントの「ワンホーン・カルテット」編成。
この録音時期には、デックスは欧州(主にパリとコペンハーゲン)に移り住んでいる(1976年には米国に戻っているが)。米国でのレーベル契約を、BlueNoteからPrestigeに切り替えていたため、この盤は、プレスティッジ・レーベルでの録音になっている。プレスティッジでの録音と聞くと、お得意の「ジャムセッション一発録り」を想起して、内容について不安になるが、この盤は大丈夫だ。
ピアノはバリー・ハリス、ベースはバスター・ウィリアムス、ドラムスはアルバート・ヒース。バックのリズム・セクションも純ジャズの人気が落ちてきた当時としてはかなり充実していて、デックスの好調さと併せて、実に気持ちの良いハードバップな演奏が繰り広げられている。
1曲だけだが、ジェームス・ムーディーとの2テナーでの演奏も良い雰囲気。ムーディーも男性的でよく歌うテナーが持ち味で、デックスとバトるかな、と思っていたら、実に相性の良いデュエットといった趣で、これがムーディーで聴き応え十分。ラストの「Those Were the Days」は「悲しき天使」の邦題で知られる当時のヒット曲。哀愁感溢れる美しいフレーズをデックスが情感豊かに吹き上げて、実に印象的。さすがデックスである。
「Stanley the Steamer」は、デックスの古いオリジナル曲だが、こういったシンプルなブルースを「大らかで誠実でどこか哀愁感漂う」テナーで吹き上げていくところなど、やはりさすがデックスである。この盤、デックスのリーダー作の中でも、あまり話題に上らない「地味盤」だが、出会ったら絶対に聴くべし、である。往年の良質なハードバップが、デックスのテナーがこの盤に詰まっている。
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