ジャズ喫茶で流したい・234
21世紀に入ってからだろうか。ジャズマンの「多国籍化」が進んでいるように感じる。20世紀は、米国が中心。米国ジャズがそのまま飛び火して、欧州ジャズとして進化し、和ジャズとして進化した。21世紀はアジアでの広がりは鈍いのだが、欧州での、特に東欧諸国とイスラエル中心に「多国籍化」が進んでいる。
Tigran Hamasyan『StandArt』(写真左)。2022年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、Tigran Hamasyan (p), Matt Brewer (b), Justin Brown (ds) のトリオがメイン。ゲストとして、フロント管の Mark Turner (sax, track 3), Joshua Redman (sax, track 4), Ambrose Akinmusire (tp, tracks 7, 8) が参加している。
リーダーのピアニスト、ティグラン・ハマシアンは、アルメニア出身。1987年生まれなので、今年で35歳。若手の時代を経て、いよいよ中堅の時代に入らんとする年頃。ハマシアンの作曲はアルメニアの民俗伝統に強く影響されているのだが、今回の新盤は、ハマシアンの自作曲は1曲のみ。他は、グレイト・アメリカン・ソングブックからとジャズマンによる「ミュージシャンズ・チューン」のスタンダード曲で占められている。
ハマシアンのスタンダード曲の演奏が興味深い。ハマシアンの作曲の「癖」が無い、他のジャズマンが演奏してきた、グレイト・アメリカン・ソングブックからとジャズマンによる「ミュージシャンズ・チューン」のスタンダード曲の演奏を聴くことによって、ハマシアンのピアノの音の個性がハッキリ判るのだ。ワールド・ミュージック・ジャズの雰囲気が薄まって、先進的なネオ・ハードバップ志向のピアノが前面に押し出ている。
まず、バド・パウエルやビル・エヴァンスといった、ジャズ・ピアノの「第1世代」からの直接の影響は感じられない。どちらかと言えば、チック・コリア、ハービー・ハンコックといった「第2世代」からの影響を強く感じる。コンテンポラリーな音の響きは、ブラッド・メルドーと同質のものと感じた。当然、コピーでは無く、そういった影響を基に、ワールド・ミュージック・ジャズ志向な個性をしっかり出しているから立派だ。
過去のジャズ・ピアノのスタイルをしっかり踏まえて、ハマシアンなりの、現代の最先端を行くジャズ・ピアノの個性とスタイルを確立しているのを、この新盤を聴いて強く感じる。ハマシアンのピアノが、アルメニアの民族伝統に依存している訳では無いこと、モダン・ジャズ・ピアノの正統な後継者の1人である、ということが、この新盤を通じて明確になった。アーティスティックな響きを湛えた優秀盤である。
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