ジャズ喫茶で流したい・235
欧州では、1970年代からの「ニュー・ジャズ」志向の音世界がしっかりと継承されていて、耽美的でリリカルなジャズ・ピアノについては、欧州で深化している。ピアニストの個性としては、現代音楽風、現代クラシック風の透明度の高い、硬質なタッチで、耽美的でリリカルなピアノを志向するタイプが多い、
Vijay Iyer『Uneasy』(写真左)。2019年12月、ニューヨーク州マウントバーノンの「OktavenAudioStudio」での録音。ちなみにパーソネルは、Vijay Iyer (p), Linda May Han Oh (b), Tyshawn Sorey (ds)。現代ジャズの哲人、ニューヨーク州アルバニー出身の中堅ピアニスト、ヴィジェイ・アイヤーのピアノ・トリオの新作になる。
Vijay Iyer(ヴィジェイ・アイヤー)は、1971年10月生まれ。今年で51歳の中堅ピアニスト。リーダー作は、1995年の初リーダー作以来、20枚以上を数える。2014年からはECMレーベルからのリリースに絞り、今回のトリオ新作もECMからのリリースになる。もともと、アイヤーのピアノは、耽美的でリリカルなピアノが個性なので、ECMレーベルの「音のカラー」にはピッタリのピアニストではある。
今回のトリオは、ベースにマレーシア出身のリンダ・メイ・ハン・オー(1984年生まれ)、ドラムスにニュージャージー出身のタイショーン・ソレイ(1980年生まれ)という国際色豊かなトリオ。この新作の録音まで、1年間、活動を共にしてきたとのこと。トリオ演奏の息はピッタリ。硬軟自在、変幻自在、緩急自在なトリオ演奏が素晴らしい。
この新作については、メインはアイヤーのピアノなのだが、アイヤーのピアノは耽美的でリリカルだが、その展開はダイナミックでメリハリがあるのが個性。このダイナミズム溢れる耽美的でリリカルなピアノで、様々な曲想の楽曲を自由自在に弾き回す。
ファンクネスは極小、耽美的でリリカルであるがダイナミズム溢れる弾きっぷりは、どこかチック・コリアやミシェル・ペトルチアーニを彷彿とさせる。が、アイヤーの弾きっぷりは端正でクラシック・ピアノのマナーに通ずるものがあり、米国出身でありながら、欧州ジャズ・ピアノの志向を根強く踏襲しているようだ。
静謐な雰囲気からスタートし、段々に盛り上がっていく1曲目「Children Of Flint」。後半、アイヤーのダイナミックなピアノが炸裂する。耽美的でリリカルなピアノが印象的な、2曲目「Combat Breathing」。ゆったりとした演奏のビートを支えるのは、リンダのベース。リズムを色彩豊かにするのは、タイショーンのドラム。
3曲目「Night And Day」は、少しかかったような、スピード感溢れる演奏。トリオのテクニックの高さをビンビンに感じる。4曲目「Touba」は、地に足が着いたような、アーシーで力感溢れるピアノ。魅力的なベースライン、キャッチャーでどこかエスニックな雰囲気を醸し出すメロディーライン。素敵な演奏だ。冒頭からの4曲で、このトリオ演奏のレベルの高さと歌心溢れる流麗な演奏内容が聴いてとれる。
我が国ではどうにも知名度が低いィジェイ・アイヤーだが、国際的には、次世代のジャズ・ピアノを担う中堅ピアニストの1人として認知されている。今回のトリオ新作も実に濃い内容で、トリオ演奏のレベルも高い。不思議と繰り返し聴きたくなるピアノ・トリオの秀作です。
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