現代の「新伝承派」な音世界
この2〜3年であるが、ジャズ・ピアノの範疇で優秀な盤が多数出ている。中堅〜ベテランを差し置いて、現在20〜30歳代の若手有望ピアニストが、続々と優秀盤をリリースしているのが主な理由だろう。加えて、ベテランのレベルのジャズ・ピアニストの活動が滞ったのも理由のひとつだろう。
Emmet Cohen『Future Stride』(写真左)。2021年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Emmet Cohen (p), Russell Hall (b), Kyle Poole (ds), スペシャル・ゲストとして、Melissa Aldana (ts -M2, 3, 7), Marquis Hill (tp -M2, 3, 7, 10)。米国の若手有望ピアニスト、エメット・コーエンのリーダー作になる。
エメット・コーエンは、1990年5月生まれ。この盤の録音時で満20歳。最近ではちょっと珍しい、早熟のジャズ・ピアニストである。2011年、ワシントンDCで開催されたセロニアス・モンク国際ピアノ・コンクールのファイナリストとなってその名が認知された。
「Masters Legacy Series」など、ジャズの歴史を扱ったリーダー作に特徴がある。また過去には、ジャズの伝統的スタイルを探求するが如く、ロン・カーター、ジミー・コブ、ベニー・ゴルソンといった巨匠を迎えた,作品もリリースしている。この最新盤『Future Stride』も、ジャズの過去と現代をシームレスに繋いだ内容の「ジャズの歴史」を扱った盤になる。
冒頭、軽快かつ流麗なストライド・ピアノが躍動する展開でスタートし、1920〜30年代の4ビート・スウィングから、現代の「対位法的奏法」まで、ジャズの歴史の中での「演奏スタイル」の数々を踏襲し、現代の「コンテンポラリーな純ジャズ」として取り纏めた内容になる。
どこか、1980年代後半から台頭した、ウィントン・マルサリスを筆頭とする「新伝承派」の演奏アプローチを彷彿とさせる内容で、この盤における「音の響き」「インプロビゼーションの展開方式」「採用されたリズム&ビート」などは、確かに「新伝承派」の雰囲気がプンプンする。現代においては「新伝承派」は「ネオ・ハードバップ」に置き換わってはいるが、この盤は「新伝承派」のアプローチを、現代において再現した様な音世界がユニーク。
コーエンいわく「今のジャズ・ミュージシャンを見渡すと、トラディショナル、ビバップ、フリー・ジャズ、コンテンポラリーと、なぜか全てジャンルに分断されているように感じる。僕は、それをナンセンスに感じ、自分が素晴らしいと思うジャズ・ピアノのスタイルを、全て盛り込んだアルバムにしたかった」。なるほど。
1919年に作曲されたクラシック・ナンバー「Dardanelle」など、古い楽曲が新しい伊吹きを宿していたり、伝統に立脚しながら、現代的であることを示す演奏の数々。コーエンの狙いは、このアルバムで十分実現されている。つまりは、現代の「新伝承派」な音世界と理解した。
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