ECM盤を出した3人目の日本人
雑誌Jazz Lifeの「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を眺めていて、日本人女性がリーダーの盤を見つけた。しかも、 ECMレーベルからのリリースとある。え〜っ、ECMレーベルが日本人ジャズ・ミュージシャンをピックアップして、リーダー作を作らせたのか? 慌てて、ECMレーベルのカタログを見直してみたら、やっぱり「ありました」。
Ayumi Tanaka Trio『Subaqueous Silence』(写真左)。2019年6月、ノルウェーのオスロ「Nasjonal Jazzscene Victoria」での録音。リーダーは日本人の「田中鮎美」。邦題は「スベイクエアス・サイレンス − 水響く −」。
ちなみにパーソネルは、Ayumi Tanaka (p), Christian Meaas Svendsen (b), Per Oddvar Johansen (ds)。ノルウェーの優秀なリズム隊をバックに従えた、日本人女性ジャズ・ピアニストがリーダーの「ピアノ・トリオ」編成。
田中鮎美は、現在ノルウェー在住の日本人ピアニスト&作曲家。2011年にオスロに渡り、ノルウェー国立音楽院のジャズ・即興音楽科に入学、故ミシャ・アルペリンに師事。そして、2013年、ノルウェーの若手有望ベーシスト、Christian Meaas Svendsen、同じくノルウェーの中堅人気ドラマー、Per Oddvar Johansenに出会い、田中鮎美トリオを結成、2016年にアルバム『Memento』にてデビュー。本作はそれ以来5年ぶりとなる2枚目のリーダー作。
テンション張った、即興演奏がメインの演奏になる。静的なリズム&ビートを底に忍ばせながら、ハードバップやモーダルな演奏とは全く正反対の、現代クラシックの室内楽アンサンブルの様な、ピアノ、ベース、ドラム、それぞれが対等の立場に立った、フリーなインタープレイ。
ピアノ、ベース、ドラム、それぞれの音数は少ない。最小限の音で表現される音の浮遊感、音の響きの広がり、音と音との「間」を活かした即興演奏。決して無手勝流の、激情にまかせたフリーなインプロビゼーションとは異なる、透明度高く、音の広がりと浮遊感をメインとした、静的なフリーなインプロビゼーション。
まるで、日本の「水墨画」を見る様な音世界である。音と音との「間」を活かしたインタープレイは、「静寂」「侘び」「寂び」な音の響きを紡ぎ上げている。
今までにも、日本人による同様な音の浮遊感、音の響きの広がり、音と音との「間」を活かした即興演奏はあるにはあったが、今回の田中鮎美トリオによる「表現」は次元が違う。かなり高度なレベルの、実にアーティステックな「静的でフリーなインプロビゼーション」である。
ピアニストの菊地雅章、ドラマーの福盛進也に次いで、日本人でECMからリーダー作を発表する3人目となった「田中鮎美」。ECMレーベルの音作りのコンセプトである『沈黙の次に美しい音』 ”The Most Beautiful Sound Next To Silence” を具現化した、注目に値するアルバム『Subaqueous Silence』。リーダーの田中鮎美には、この盤だけの単発に終わること無く、定期的にリーダー作をリリースし続けて行くことを望みたい。
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