ECM発マチェイ・オバラの新盤
欧州ジャズ・レーベルの老舗レーベルの「ECM(Edition of Contemporary Music)」。1969年、マンフレート・アイヒャーにより創設。以降、米国ジャズの基本となったハードバップとは一線を画する、欧州ジャズの特質を明確に宿した、即興演奏を旨とした「ニュー・ジャズ」をメインに活動した。
限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音が特徴で、ファンクネス皆無、透明度が高く、演奏のテクニックが高度な演奏が繰り広げられる。即興演奏を旨とするが、決して、フリー・ジャズに偏らない。というか、意外とフリー・ジャズ、アバンギャルド・ジャズは少数派。即興演奏を旨とするが、基本的にリズム&ビートはキープした中での、モーダルな演奏、無調な演奏がメイン。
新人ジャズマン、有望ジャズマンの発掘も積極的。特に、欧州各国における代表的ジャズマンの発掘に長けている。そんなECMレーベル、21世紀に入ってもその活動は順調で、毎年、コンスタントに新盤を一定数リリースし続けている。カタログに入っているアルバムも相当数に登っていて、最近ではカタログ番号順に聴き進めることは諦めた。カタログを見て、これは、と思った盤を聴くことにしている。
Maciej Obara『Three Crowns』(写真左)。2019年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Maciej Obara (as), Dominik Wania (p), Ole Morten Vagan (b), Gard Nilssen (ds)。リーダーのアルト・サックスとピアノがポーランド、ベースとドラムがノルウェー出身の混成カルテット。
いかにも、ECMレーベルらしい音世界に思わず聴き入ってしまう。限りなく静謐で豊かなエコーをはじめ、半世紀以上続くECM独特の音世界なのだが、演奏するメンバーが個性的なので飽きることは無い。
この盤のリーダー、マチェイ・オバラのアルト・サックスの音だって、ちょっと聴けば「ヤン・ガルバレクか?」と思うが、暫く聴き進めると、ガルバレクよりも音が少し明るく丸く暖かく、フリー&アバンギャルドな演奏にも長けているところがオバラ独特の個性。
オバラ作が6曲、Henryk Mikolaj Grecki(ヘンリク・ミコワジ・ゴレツキ)作が2曲。冒頭の「Three Pieces in Old Style (Part 1)」は漂う様な、ECMらしい繊細なバラードで、あまりの静謐さに「これはちょっと」と思うが、2曲目の「Blue Skies for Andy」の哀愁感溢れる、アグレッシヴでモーダルな演奏に俄然、聴く気が湧いてくる。現代の即興演奏に重点を置いたモード・ジャズの典型的な演奏が良い。ラストの「Mr. S」はしっとりとしたメロディーがキャッチャーな、自由度の高いバラード演奏。
他、即興演奏に重点を置いた印象的なモード・ジャズをメインに、フリー・ジャズあり、アバンギャルド・ジャズあり、現代のコンテンポラリーな純ジャズの良いところがギッシリ詰まっている。ワニアのピアノはリリカル、バーガンのベースはテクニック優秀で重量感豊かでしなやか、ニッセンのドラムは柔軟かつ堅実。実に充実したカルテット演奏である。
タイトルの「Three Crowns」は、ポーランド南部のピエニィニ山脈のトルツェコロニー山脈の頂上にちなんだもの、とのこと。ジャケットも前衛的なECMらしいものでグッド。
実を言うと、僕はこのジャケットに惹かれてこの盤を聴くに至った、いわゆる「ジャケ買い」盤だった。しかし、聴いて感心することしきり、さすがECM、現代のコンテンポラリーな純ジャズのいいところを押し出してきた。現代の欧州ジャズの注目株である。
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