« 最近出会った小粋なジャズ盤・4 | トップページ | 最近出会った小粋なジャズ盤・6 »

2022年4月 6日 (水曜日)

最近出会った小粋なジャズ盤・5

ズート・シムス(Zoot Sims)は、玄人好みのサックス奏者である。というのも、コマーシャルなところが全く無いので、内容の良いリーダー作についても、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌にその名が上がることが少ない。ズートの正式盤については「駄盤無し」なのだが、我が国ではどうにもマイナーな扱いに甘んじているのが、実に歯がゆい思いがする。

Zoot Sims『Zoot at Ease』(写真)。1973年5月と8月、NYの「A&R Recording Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Zoot Sims (ts, ss), Hank Jones (p), Milt Hinton (b), Grady Tate, Louis Bellson (ds)。リーダーのズート・シムズのサックス1管がフロントのカルテット編成。いわゆる、ズートの「ワンホーン・カルテット」である。収録曲の中に「Rosemary's Baby(ローズマリーの赤ちゃん)」なんかが入っているのが、いかにも1970年代の録音らしい。

収録曲を眺めてみると、ハンク・ジョーンズ作の8曲目「Beach In The A.M.」以外は、ほぼスタンダード曲。しかも、この盤はズートの「ワンホーン・カルテット」。ズートのサックス奏者としての力量が露わになる内容である。しかも、録音年は1970年代。純ジャズの冷遇時代の中での録音である。ジャズ風のイージーリスニングになっていないか、聴くまでは不安だった。
 

Zoot-at-ease_zoot-sims

 
が、それは杞憂であった。この盤のズートのサックスは力強くて流麗、説得力抜群の吹きっぷりで、これぞズート、ズートのサックスはこれやないと、と感じて嬉しくなる。アレンジも優秀で、このアレンジのお陰で、ズートのサックスの魅力が倍増している。冒頭のアップテンポの「Softly, As In A Morning Sunrise」や7曲目のスイング感抜群「My Funny Valentine」など、手垢の付いた「どスタンダード曲」が、先読みできない優れたアレンジに乗って、新たな魅力を持った楽曲として甦っている。

しかし、ズートのサックスって良いなあ。バックのリズム隊も「渋い」メンバー揃い。ピアノのハンク、ベースのヒントン、ドラムのテイト、もしくはベルソン。ハードバップ時代から第一線で活躍してきた「強者」ばかり。決して、1950年代のハードバップ時代を踏襲したものではない、1970年代ならではの新しい感覚のアレンジに乗って、収録曲に並んでいるスタンダード曲に新しい魅力を加えている。

ズートのリーダー作に駄盤無し。結構な数のリーダー作がありながら、我が国では、玄人好みのサックス奏者、マイナーな扱いになっているのが不思議でならない。ズート・シムスとスタン・ゲッツとを比較して、「ズートには人気盤が無い」などという暴論もあるが、比較するのも意味が無いし、人気盤の有無など「何をか言わんや」である。ズートはズート。今回、この盤を聴いて、今一度、ズートのリーダー作の聴き直しを進めてみよう、という気になった。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4

« 最近出会った小粋なジャズ盤・4 | トップページ | 最近出会った小粋なジャズ盤・6 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 最近出会った小粋なジャズ盤・4 | トップページ | 最近出会った小粋なジャズ盤・6 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー