シャイ・マエストロの最新盤
ジャズ・ピアノについては、長年、実力、人気共にトップの座に君臨していた、キース・ジャレット、チック・コリア、ハービー・ハンコックの3人のうち、チックは鬼籍に入り、キースは脳溢血により再起不能状態、ハービーは隠遁状態。次世代を担う存在、ブラッド・メルドーは元気だが、マーカス・ロバーツは目立たなくなり、ジェリ・アレンなどの女性ピアニスト達もちょっと地味な存在になりつつある。
しかし、最近の新盤を聴いていると、ブラッド・メルドーの世代を飛び越えて、20歳代〜30歳代の若手中心に、キース、チック、ハービーの世代の次々世代を担うジャズ・ピアニストが多く出てきている様だ。そんな有望株の中に、キースやチック、メルドーのフォロワーがいたりして、時代の移り変わりを感じる。僕等が若い頃は「(バド・)パウエル派」か「(ビル・)エヴァンス派」が主流だったなあ。
Shai Maestro『Human』(写真左)。2020年2月「Studios La Buissonne, Pernes-les-Fontaines」での録音。2021年1月、ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Shai Maestro (p), Philip Dizack (tp), Jorge Roeder (b), Ofri Nehemya (ds)。現在のイスラエルを代表するジャズ・ピアニストのシャイ・マエストロの、2年ぶりのリーダー作。シャイ・マエストロは、1987年、イスラエル生まれ。今年で35歳。キース・ジャレットからも賞賛される若手有望なピアニストである。
キースが賞賛するのも何となく判る。シャイ・マエストロのピアノは、どこかキースのピアノの雰囲気を持っている。耽美的でリリカルで端正な弾き回しなど、キースのフォロワーと言っても良いくらい。しかし、キースほどどっぷり入り込んだ様な流麗さでは無く、サッパリとした切れ味の良いタッチで、シンプルなリリカルさはシャイ・マエストロ独特の個性だろう。
シャイ・マエストロと、ドラムのオフリ・ネヘミヤはイスラエル出身。ベースのホルヘ・ローダーはペルー、トランペットのフィリップ・ディザックは米国と、多国籍なカルテット編成。叙情的で穏やかなメロディー、流麗で透明感溢れるタッチ、シャイ・マエストロのピアノに、語りかける様に、肉声の様なトランペットが絡む。ベース&ドラムのリズム隊も柔軟にフロントを支え、鼓舞する。現代の先端を行く、自由度とイマージネーションに溢れるインタープレイの数々。
イスラエル出身シャイ・マエストロだが、この盤での音はイスラエル色は薄い。それでも、この盤に詰まっているのは、現代のコンテンポラリーな純ジャズであり、伝統的なメインストリーム系のジャズを踏襲しつつ、新しい響きと要素を盛り込んだ、洗練された神秘的なサウンド。カルテットの一体感が素晴らしく、雑誌Jazz Lifeの「2021年度 Disc Grand Prix 年間グランプリ」に、この盤のタイトルが挙がるのも頷ける。
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