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2022年3月 7日 (月曜日)

ウェスCTI三部作の最優秀盤 『Down Here on the Ground』

1967年、A&Mレコード内のジャズ・レーベルとして、敏腕プロデューサー「クリード・テイラー」が創設。レーベル名称「CTI」は「Creed Taylor Issue」の頭文字。1970年にCTIレコードとして独立するまでは「A&M CTI 3000番台」が主なカタログ。フュージョン・ジャズの前触れ、イージーリスニング・ジャズの宝庫である。

Wes Montgomery『Down Here on the Ground』(写真)。1967年12月、1968年1月の録音。A&M CTI三部作(『A Day in the Life』『Road Song』と本作)の中の真ん中2番目のウェスのリーダー作になる。実は3部作の中で一番人気が無いのだが、内容的には一番充実している。

ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Grady Tate (ds), Ray Barretto (perc), Hubert Laws, George Marge, Romeo Penque (fl, oboe), Bobby Rosengarden (perc), Mike Mainieri (vib), Gene Orloff, Raoul Poliakin (vln), George Ricci (cello), Emanuel Vardi (viola)。

大衆音楽の主流がロック&ポップスに移りつつある時代を感じる。当時の人気ジャズマン、ハンコック、カーター、テイトがリズム隊を務める。イージーリスニング・ジャズのムーディーな雰囲気を醸し出す、フルート&オーボエ、そしてストリングスが名を連ねる。もちろん、リーダーは、オクダーヴ奏法のギター・レジェンド、ウェス・モンゴメリーである。
 

Doun-here-on-the-ground_1

 
ウェスのA&M CTI三部作の中で、一番、イージーリスニング・ジャズの「俗っぽい」雰囲気が薄く、後の「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの先取り的な、流麗で聴き心地の良い、それでいて、しっかりと地に足が着いた、ハイテクニックなインプロビゼーションが素晴らしい。特に、リーダーのウェスのギターが光っている。

この盤の選曲が良い。当時のポップス曲っぽいのは、バカラックの「I Say a Little Prayer」くらいで、後の曲はミュージシャンズ・チューン若しくはウェスの自作。スタンダード曲としては「Georgia on My Mind」が選曲されているが、アレンジが秀逸で、俗っぽさとは全く無縁の名演。

実は「A&M CTI 3000番台」では、当時のポップス曲のカヴァーのアレンジが、あんまり上手く無くて、「俗っぽい軽音楽的な」雰囲気を増長していたのだが、この盤には当時のポップス曲のカヴァーが無い。これが「俗っぽい軽音楽的な」雰囲気を相当に薄めていて、意外とこの盤を上質なイージーリスニング・ジャズの好盤に仕立て上げている。

ウェスの必殺「オクダーヴ奏法」が、これほどまでにイージーリスニング・ジャズに向いているとは思わなかった。ウェスのギターは「音が太く切れ味が良い」。曲の持つフレーズが躍動感も持って浮き出てくる。そして「ファンクネスが色濃く香るピッキング」。弾き出すフレーズがファンキーな色に染まる。このウェスの個性を見抜いたクリード・テイラーの慧眼には感服するばかりである。
 
 

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