« ハバードの隠れ名盤の一枚 『Hub-Tones』 | トップページ | ユッコの『Colorful Drops』 »

2022年3月30日 (水曜日)

今の耳には優秀なハードバップ 『Jackie Mclean Quintet (Blue Note)』

1960年代前半のジャズ・シーンって、面白かったんだろうな、と思う。ハードバップが成熟し、その成熟したハードバップを基に「ジャズの多様化」の時代になったのが1960年代前半。コマーシャルな面に力点を置いたのが「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」で、LPやEP(ジュークボックス)での売上に貢献した。アーティステックな面に力点を置いたのが「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」で、様々な「実験的なチャレンジ」が行われていた。

『Jackie Mclean Quintet (Blue Note)』(写真左)。1962年6月14日の録音。 ブルーノートの4116番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Kenny Dorham (tp), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのマクリーンのアルト・サックスとケニー・ドーハムのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

実はこの盤、ブルーノートお得意の「内容が良いのに何故かお蔵入りになった」盤の一枚である。4116番というカタログ番号まで用意されていたのに、録音当時はお蔵入り、その後、BN-LAのシリーズで、1967年の未発表と併せて『Hipnosis』(写真右)というタイトルの2枚組の中で発表されている。パーソネルを見渡すと「聴いてみたい」と触手が伸びる面子で、再発され、その後、順調にCDリイシューされたことを素直に喜びたい。
 

Jackie-mclean-quintet-blue-note

 
内容的には「成熟したハードバップ」である。フロントのマクリーンもドーハムも好調。長年、手慣れた「ハードバップ」のマナーの中で、バリバリ吹きまくっている。ソニー・クラーク以下のリズム隊もフロントのブロウに合わせて、「成熟したハードバップ」風のリズム&ビートを供給する。ファンキーでも無ければ、モードでも無い。ひたすら「ハードバップ」な演奏を繰り広げる。

そんな中で、ピアノのソニー・クラーク(以下、ソニクラと略す)が良い味を出している。このひたすら「ハードバップ」な演奏の中に、そこはかとなくマイナーでファンキーな雰囲気を醸し出しているのが、ソニクラのピアノだ。転がる様な流麗な右手が、フロントの2管を刺激する。負けずに流麗で疾走感溢れるブロウが、ソニクラのピアノに引き出される。

1960年代前半は「ジャズの多様化」の時代。セールスを追求するなら、モード・ジャズ(新主流派)やジャズ・ロック、ファンキー&ソウル・ジャズのいずれかでないと厳しかった時代。リアルタイムでこの「成熟したハードバップ」風の好盤をリリースするには、セールス的に厳しい、という判断があったのでは無いか。今の耳には優秀な「成熟したハードバップ」盤。1990年代、単独リイシューされて良かったと思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4

« ハバードの隠れ名盤の一枚 『Hub-Tones』 | トップページ | ユッコの『Colorful Drops』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ハバードの隠れ名盤の一枚 『Hub-Tones』 | トップページ | ユッコの『Colorful Drops』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー