ボシレフスキ・トリオの新作
2017年以降、キース・ジャレットが引退状態になってから、既に5年が経つ。2018年に脳卒中を2回発症して麻痺状態となり、まだ左半身が部分的に麻痺しており、ピアノ演奏に復帰できる可能性が低いとのこと。実に残念なことではあるが、ジャズは生きている。キースのフォロワーなジャズ・ピアニストが幾人か現れ出でて、とても内容のあるリーダー作をリリースしている。
Marcin Wasilewski(マルチン・ボシレフスキ)。1975年生まれ。ポーランド出身のピアニスト。今年47歳の中堅ピアニスト。13歳の時に手に入れたキース・ジャレットのアルバムに感銘し、強い影響を受ける、とある。確かに、ボシレフスキのピアノはキースの影響が感じられる。しかし、それだけでは無い。彼は彼なりの独特の個性がある。僕はそこに惹かれている。
Marcin Wasilewski『En attendant』(写真左)。2019年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Marcin Wasilewski (p), Slawomir Kurkiewicz (b), Michal Miskiewicz (ds)。ECMレーベルの7枚目。とてもECMレーベルらしいトリオ盤。ECMレーベル独特のエコーと残響が、ボシレフスキのピアノの音を引き立てる。クルキエヴィッツのベース音とミスキエヴィッチのドラミングが、ECMエコーに映えて、クールな躍動感を演出する。
このポーランドのトリオの表現はより多面的に、より広範囲な志向のトリオ演奏を実現している。ボシレフスキのピアノは、ベースは「キース・ジャレット」。しかし、キースの様な鋭角でアブストラクトな面は希薄、より耽美的でリリカルな、丸みを帯びたフレーズがボシレフスキの独特の個性。どこかキースかな、と思えるところが微笑ましい。さすが、良い意味でキースのフォロワーである。
収録曲は全部で7曲。ピアノ・トリオへのアレンジが素晴らしい、カーラ・ブレイの名曲「Vashkar」、そしてバッハの「Goldberg Variations」からのセレクト。また、ボシレフスキのどこかゴスペルチックな「Glimmer of Hope」、ドアーズの「Riders On The Storm」の秀逸なカヴァーなど、ボシレフスキの耽美的でリリカルで、丸みを帯びたフレーズが個性のピアノが「映える」選曲とアレンジが実に粋だ。
耽美的でリリカルに留まらず、時に「ゴスペル」風に仄かな躍動感を伴ってインタープレイを展開するマルチン・ボシレフスキ・トリオは魅力的だ。このトリオの持つ「透明感」は欧州ジャズならではのもの。現代の欧州のピアノ・トリオを代表する存在になってきたなあ、と感慨深さを感じる、マルチン・ボシレフスキ・トリオの新作である。
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