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2022年3月22日 (火曜日)

リトルの考える新しいジャズ『Out Front』

Twitterで定期的に呟いている「今日のスタート」で、夭折のトランペッター、ブッカー・リトルのリーダー作を特集しているのだが、リトルのリーダー作の中で、当ブログにアルバム・レビューをアップし忘れているものがあったので、ここでフォローしたいと思う次第。

Booker Little and his Quintet Featuring Max Roach『Out Front』(写真左)。1961年3月17日と4月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little (tp), Julian Priester (tb), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Don Friedman (p), Art Davis (b, tracks 1, 3 & 7), Ron Carter (b, tracks 2 & 4-6), Max Roach (ds, timpani, vib)。

このリーダー作、スタジオ録音で、エリック・ドルフィーとの共演が実現している。他のメンバーを見渡しても、ピアノにドン・フリードマン、ベースにアート・デイヴィスとロン・カーター、トロンボーンにジュリアン・プリースター、と当時の最先端のジャズ、新主流派の若き担い手達が参加している。ドラムだけは、リトルの保護者は私だ、と言わんばかりに、相変わらずマックス・ローチが担当している(笑)。
 

Out-front-booker-little

 
マックス・ローチはともかく、このリトルのリーダー作は、パーソネルからも判る様に、新しいハードバップな響きに満ちている。まだ、完全モーダルな世界でも無いし、フリーなフレーズは出てくるにせよ、内容はフリーでは無い。しかし、個々のインプロビゼーションの自由度は高く、コードの解釈もユニークなもの。来たるべき「ジャズの多様性の時代」を体験できる、実にアーティスティックな内容に驚く。

そんな中で、リトルとドルフィーが傑出している。リトルはとっても良いトランペットの音で、モーダルな展開をメインに流麗かつエモーショナルなブロウを繰り広げる。そして、ドルフィーはドルフィーで、ポジティヴに捻れた、怪しくエモーショナル、かつ、アブストラクト寸前で滑らかな、思いっ切りユニークなフレーズを吹きまくる。とりわけ、バスクラの音が「怪しい」(笑)。

ハードバップに続く、来たるべき「新しいジャズ」を十分に予感させる、創造的かつ個性的なモダン・ジャズがこの盤に詰まっている。まだ、洗練されていない部分や熟れていない部分があるにせよ、この盤に詰まっているジャズは「新しい」。しかし、リーダーのリトルはこの盤の録音の半年後に夭折する。リトルの「この盤の次のジャズ」を聴きたかった。
 
 

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