川崎燎の硬派なエレ・ジャズ盤
1970年代以降に活躍した、我が国出身のジャズ・ギタリストと言えば、渡辺香津美、増尾好秋、それから・・・。渡辺、増尾ときて、後が続かないのだが、僕は「川崎燎(かわさき りょう)」の名前を覚えている。
川崎燎は学生時代から、プロのジャズ・ギタリストとして活躍。1973年、単身にて米国に渡り、ニューヨークを拠点に活動を展開。ギル・エヴァンス・オーケストラ、エルヴィン・ジョーンズ、チコ・ハミルトン、テッド・カーソンといった有名ジャズマンのバンドに起用され、アルバム&ツアーに活躍。僕がジャズを本格的に聴き始めた、1970年代の終わり頃には、結構、人気のクロスオーバー系のギタリストだった記憶がある。
しかし、それ以降、川崎の名前はフェードアウトし、そう言えばどこへいったのか、と思っていたら、ジャズ・バレエの音楽監督を依頼されたことがきっかけで、バルト三国のエストニアに移住、首都タリンをベースに活動しているとのこと。あまりリーダー作を出しているほうでは無いので、川崎のエレギに触れる機会が少ないのが残念な現状である。
川崎燎『Nature's Revenge』(写真)。1978年3月の録音。ちなみにパーソネルは、川崎燎 (g), Dave Liebman (ts, ss), Alex Blake (el-b). Buddy Williams (ds, perc)。川崎のギターとディヴ・リーヴマンのサックスがフロントのピアノレス・カルテット編成。川崎燎の、独MPSレーベルに吹き込まれた優秀盤である。
録音された時期がフュージョン全盛期なので、フュージョン・ジャズかな、とも思ったんだが、録音したレーベルがバリバリ硬派なジャズ・レーベル「MPS」なので、そんなことは無いか、と思って聴いたら、やっぱり、硬派でコンテンポラリーな純ジャズ志向のエレクトリック・ジャズだった。
加えて「MPS」はドイツのレーベル、演奏の雰囲気は「欧州的」。日本人ジャズらしく、ファンクネス薄めでアーティスティックな雰囲気を色濃く持つ秀作である。
川崎のギターは「ペンタトニックを基調とした」個性的なフレーズが魅力。個性的な音は一度聴いたら忘れられない位に独特。激しいアブストラクトに傾くフレーズは「大人しいジミヘン」、ソフト&メロウなフュージョン風の演奏は「ファンクネスを薄めたベンソン若しくはウエス」、8ビートで疾走する演奏は「和風ラリカル」。それでいて、仄かに捻れて音が濁るところが、如何にもジャズらしい。
バックのメンバーも好演に次ぐ好演なんだが、やはり、特に、デイヴ・リーヴマンのサックスが冴え渡っている。とにかく良い音で鳴っている。ストレートに伸びたブロウ、テクニックに優れた速吹き、情感溢れるバラード演奏。この盤でのリーヴマンは絶好調。スラップなブレイクのエレベも端正でソリッドなベース音が心地良く、タイトでロック・テイストなウィリアムスのドラミングも見事である。
さすが欧州はドイツの硬派なジャズ・レーベル「MPS」での録音、当時流行の「ソフト&メロウ」な聴き心地の良いフュージョンな演奏に留まっていないのが素晴らしい。内容的には、コンテンポラリーな純ジャズ志向のエレクトリック・ジャズ。
欧州ジャスの環境がそうさせるのだろう、ファンクネス薄めで、乾いたグルーヴ感が気持ち良い、上質のオフビートが印象的。日本人によるコンテンポラリーな純ジャズ志向のエレ・ジャズの秀作として、一聴をお勧めしたい好盤です。
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